第77話
中間地点にある集落、特に名前もない集落でリンベンの町の管理下にあるが、ほとんどかかわりがない集落らしい。農地と放牧地があり、いくつかの住宅と納屋があるくらいで、総人口は30人いるかいないかだ。
「ここで休憩しよう、馬車を引いている馬も休ませないといけないんだ」
馬車を引いている馬も、騎士たちの馬も、それなりの重量物を引いたり乗せたりしているため疲弊しやすく、数時間に小1時間ほどの休憩が必要になるらしい。
馬車から解き放たれた馬たちは付近の草を食んだりしているようだ。
「私たちも昼食にしよう。集落の外れだから火を起こしても大丈夫だろう」
「俺もリンベンに向かう途中にこの集落で休憩してたんだけど、良くも悪くもここの集落の人たちは外から来る人間に興味がないらしい」
「そうか、小さな集落だとそういうこともよくある。集落から人を外に流出させないように外部とのかかわりをなるべくしたくないってことなのかもしれないな」
「なるほど、過疎化か」
現代日本でも、田舎の不便な生活よりも都会の便利な生活を求めて都市部へと移住する人は多いだろう。結果として、小さな村や町の人口は減っていき、人口が減少。小学校や中学校が廃校になることも珍しくはない。
それでも、その土地に思い入れのある人たちや、都会の喧騒に疲れた人たちがUターンしてくることも珍しくはない。
この集落も人口の流出を抑えるために、外との繋がりを極力抑えている。便利な町の暮らしを知ってしまえば、集落から出ていってしまう人が増えると考えたのだろう。
「あ、あのぁ、すいやせん」
過疎化についてなんとなく考えてぼやぁっとしていたローレンに、いかにも村人っぽい恰好をした老人が話しかけてくる。
「ん?なにか?あ、もしかしてここで火を使うのはマズかった?」
「あ、いえ、そうではなくで...」
「?」
「じ、実は、先日の夕方から子どもが1人行方不明でして...」
「それで?」
「集落の周りは皆が総出で探したのですが、見つからず...途方に暮れているのです...」
集落の周りはほとんどが草原で、見える範囲にいくらか林があるくらい、その範囲を全て探したが見つからなかった。ということだろう。
「何歳くらいの子だ?」
「6歳です...」
小さな子どもの足で、1日歩いたとしてもそこまで遠くまでは行けないはずだ。自分が迷子になっていると理解していれば、その場で立ち止まって助けが来るのを待つ、もしくは闇雲に歩いて行ってしまうかの2択だろう。今回の場合は後者の可能性が高い。
「ふむ、ローレン、子どもの捜索を手伝ってあげてくれないか?」
考え込んでいたローレンの後ろから声がかかる。
「ガーランド伯爵、ですが護衛の依頼の方は...」
「構わん。いや、むしろ私が捜索を君に依頼しよう。領民が困っているのに助けない領主などにはなりたくないからな」
「あ、ありがたや...領主様がいてくれて助かったぁ...」
「わかりました。捜索に手を貸します」
「うむ、私もこの集落で待っているから、早く見つけて来るんだ。頼んだぞ」
「はい」
ローレンは詳しい話を聞くために、何人か集まっている村人たちの方へと駆けていった。
「どうすっぺかなぁ」
「どうもこうもねぇっぺ、見つかるまで探すだよ」
「すまない、ちょっといいか?」
「なんだいあんたぁ」
「そこの爺さんに頼まれてな、捜索を手伝うことになった。最後にその子を見たのは?」
「あ、あたしです」
「どっちに行ったかとかわかるか?」
「えぇっと、東の方だったかなぁ?と思います」
「それを見たのはいつ頃?」
「昼過ぎて、日が傾き始ずめる頃だったかなぁ?」
「わかった、集落の周りはそっちが、東の方は俺が探す」
「わがりました」
ローレンは話を聞き終えると、さっそく集落の東側へと向かった。東側にはだだっ広い草原が広がっており、普段は放牧地として使われているようだが、今は納屋の方に家畜たちを移動しているようだ。
東の草原を駆け足で進んでいくと、10分ほどで山林に入る。斜面はなだらかだが、生えている草木は多く
歩きにくい。小さな子どもが入って行くとは思えないような場所だが、未だに見つかっていないことを考えれば、この山林を超えて行ってしまった可能性もある。そうなると、心配なのがモンスターだろう。小さな子どもはゴブリンやコボルトたちからすれば美味しい餌でしかない。
ローレンは焦る気持ちを押さえながらも山林の中を歩いた。
山林の中を歩いていると、ゴブリンを見つける。数は4匹、見つけたからには始末しておくべきだろう。
まずはローレンが見つからないように近付いていき、1発。ゴブリンは声を上げる暇さえなく、頭と胴体が泣き別れる。
他のゴブリンたちも、銃声に驚き、その光景を目にして混乱している。
山林に3発の銃声が響くと、そこに残ったのは燃やされて灰になっていくゴブリンの死体だけだった。
(銃声はマズかったかな。子どもが驚いて逃げてしまうかもしれない...)
ローレンはやがて山林を超えて、湿地のような場所へとたどり着いた。
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