第61話
ローレンはリカルドの言葉に憤慨して、睨みつける。冒険者になる前は丁寧な口調で話しかけてきたくせに今となっては後輩に話しかけてくる先輩のような印象を受ける。
「まぁまぁ、そんな怒るなって。人生の先輩からのアドバイスだぜ?」
「そうかそうか、リカルドはあの場面でNOと言えるくらい度胸があるんだなぁ」
「ぐっ...そ、それはだなぁ」
「おめぇ!ぶっ飛ばすぞ!」
「わかったわかった、謝るから」
ローレンは怒りを通り越して呆れそうになるが、このままでは話が進まないと本題へと移る。
「で?ランクアップは?」
ぶっきらぼうに不機嫌にローレンが問う。リカルドは苦笑いしながら答える。
「ああ、素材は確かに受け取った。因みにスピアバードはどうだった?」
「ん?あぁ、普通に急降下してくるところを撃って墜とした」
「なるほどな。じゃあ余裕だったってことか?」
「まぁ、そうだな」
「そうか。とりあえずFランク昇格は確定だ。ギルドカード貸してくれ」
ローレンは言われるままにギルドカードを取り出してリカルドへと渡す。するとリカルドはいったん部屋から出ていき、1分もしないうちに戻ってくる。
「今、ギルドカードのランク記載を変えてもらってる。少し時間がかかるから待っててくれ」
「わかった」
「待ってる間暇だからな。次のEランク昇格について話しておこうか」
「急だなぁ、まあ頼む」
「Eランクは昇格試験がある。それは知っていたか?」
「いや、知らなかったな」
「そうか、まあとにかく試験がある。ランクFなら誰でも受けることができる。ただし手数料がいくらかかかることになる。そしてクラムのギルドではランク昇格試験は受けられない」
「そうなのか」
「ああ、この近辺だと、イルマの方まで行かないと受けられない」
イルマ。連合王国の中でもトップクラスに平和な土地であるクラムを含めるガーランド領の中心都市だ。ガーランド伯爵家があるのもイルマだ。
ガーランド伯爵領は連合王国の東端に位置しており、他国との国境を持たない土地であるため、肥沃な土地と相まって連合王国の中でもトップクラスの税収を誇っている。ただし、安全な土地柄であるため、王に納める税も多くなっているため、大規模な発展は行われていない。
他国と国境を持たないというのは、東から北側はアーダール山脈とアーダール大樹海によって塞がれており、その向こう側に国があるのかどうかすらいまだにわかっていないのだ。南側は内海である青海が、西側はリーベン侯爵領になっている。これが国境を持たない領地と言われている理由だ。
ただし、メリットばかりではなく、東端の都市ライオットではアーダール大樹海からのモンスターの襲撃が幾たびか起こっている。ライオットはその性質上、ライオット辺境伯が統治しているのだがガーランド伯爵家の分家に近い関係である。
因みにクラムはガーランド伯爵領の北西にある。だが、リーベン侯爵領に続く街道がないため交易などは発展していない。
「イルマか。どれくらいの距離だ?」
「馬車で5日くらいだな。途中に1つの町と村が2つくらいあるが、1回か2回は野営が必要だ」
「そうか...」
ローレンが考えをまとめようとすると、部屋の扉がノックされてジーンが扉を開けて入ってくる。
「ローレンさんのギルドカードの記載が完了しましたー」
「おう?ジーンわざわざ来てくれたのか、そろそろ取りに行こうとしてたところだったんだ」
「別にリカルドさんのためじゃないです~。はい、ローレンさんどうぞ」
ジーンはリカルドを無視してローレンに笑顔でギルドカードを渡すと、一瞬だけリカルドに意味深な視線を向けるとすぐに扉を開けて部屋を出ていった。
「あ、リカルドさん、まぁ気を落とさずに」
ローレンはさっきの仕返しとばかりにリカルドの肩をトントンと叩きつつ煽った。
「う、うるせぇ!」
ローレンはリカルドの部屋を出てギルドへと戻る。セシリアがジーンと何か話しているようだったが、構わずにローレンはギルドを出た。
そのままのローレンはダッソーの鍛冶場へと向かった。
鍛冶場では4人のドワーフが今も試行錯誤をしてライフルの開発を進めていた。ローレンは集中している4人に申し訳なく思いながらも鍛冶場へと入る。
「こんにちは~」
「お、ローレンか、どうした?」
「ライフルはどんな感じですか?」
「あぁ、今はライフリングを刻む方法を考えてたところだ」
「何か案が?」
「あぁ、2つある。専用の器具を使って筒の中に溝を刻む方法と、筒を縦に2つに割ってから螺旋を中に刻んで合わせる方法だ。どっちがいいと思う?」
「前者は器具ができれば性能の良いライフリングが刻めるかと、ただしライフリングの詳しい形は試してみないとわからないから、試行錯誤のたびに器具を新しく作るのはコストがかかる。後者はコストが安くて試作しやすいが正確性にやや欠ける」
「あぁ、そうだな。流石ローレンは話が早い」
「だからまずは2つに割って刻む方法を取るべきだな」
「わかった」
ダッソーは深く頷いて今も何かしらの作業をしている残りの3人に説明し始めた。
ローレンはダッソーが話し終えるのを鍛冶場の端っこで待ち、10分ほど鍛冶場の中で作業する4人を眺めていた。
「よし。ローレン、今日の用はそれだけか?」
「いや、あとは弾薬の作成の依頼と投資を」
「投資は助かる。研究ってのは結構資源と資金を喰うからな。それと弾はどれくらいだ?」
「散弾を100発頼む。フレシェットも10発」
「おぉ、また大量だな」
「これから少しの間、町を離れる用事ができるかもしてなくてね」
「なるほど、わかった。忙しくなるな」
ローレンは銀貨が何十枚も入った袋をダッソーへと渡す。ダッソーはその袋を金庫へとしまうとさっそくとばかりに弾薬の作成に取り掛かった。
因みにフレシェット弾用の火薬は追加でケリーに頼んであるため、数日後には届いているだろう。
なんでも錬金術師に質のいい火薬草を加工してもらい作った物らしいのだが、おそらく特殊な加工はせずにローレンと同じ方法で作った物だと思われる。それでも手間が掛るよりは買ったほうがマシだと考えたローレンはケリーに頼んだのだった。
「じゃあ、自分は帰るよ。あ、トマト煮込み食べに行かない?」
「「「「もちろん行く(行きます)」」」」」
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