第59話
ローレンとセシリアは目撃情報があった湖へとやって来た。以前レナと一緒に特殊な薬草類を取りに来た場所だったが、それ以降は一度も来ていなかった。
「あ、そういえばローレン、あなた特異な武器を使うって聞いたんだけど...?」
「あぁ、これか?これは銃って言って火薬で鉄の弾を撃ちだす武器なんだ」
「へぇ、初めて聞いたわ」
「セシリアは魔法使いだよな?属性は?」
「私は火属性よ。まぁ至って普通の魔法使いね」
とは言っても、魔法だけを特化して使う冒険者は比較的すくなく、補助的運用をする者の方が多い。その中でも魔法だけを使う魔法使いというのはやはり希少な存在であることには変わりはない。もしも魔法使いでも普通の冒険者並みの魔法しか使えないなどという者がいたら、鼻で笑われるようなものだ。単純な魔法使いならば保有魔力や魔法の威力など何かしら必ず秀でているだろう。
「ちなみに、イヴァンさんは知っているか?」
「えぇ、話には聞いているわ。まぁ、イヴァンって人よりは強くないと思うからあまり期待しないで欲しいわね」
「あぁ、どちらも後衛的なポジションなのはやっぱり不便か」
「そうかしら?どこかで高ランクの弓使い冒険者がパーティー組んでた話を聞いたわよ?」
「たぶんそれは臨時で組んだものだろう?」
「あら、知ってたの?」
「いや、普通はしないだろそんなこと。なにか特殊な依頼を受けてたんじゃないかなって」
「そうらしいわね。詳しくは知らないけど。やっぱり王道は前衛2人と後衛1人のパーティーよね」
セシリアは昨日まで一緒にいた冒険者たちを思い出していたのか、苦虫でも数匹噛み潰したような顔をしている。せっかくのかわいい顔が台無しになっている。
何はともあれ、2人は湖の付近を探索し始める。セシリアが主に空を、ローレンが地上を索敵しつつ、進んでいく。
湖の小さな波音が聞こえる湖畔を時計回りに歩いている。ここが安全な場所であるならさながらデート気分を味わえるような景色ではあるのだが...
「ん?あ、ローレン見つけたわ。あそこ」
セシリアは空を指さして声を上げる。セシリアの指さす先には、体長50センチくらいの鳥が悠々と空を舞っている。その格好はあまりにも嘴が長くなっておりかなり滑稽、だがその嘴の鋭利さは遠目で見てもわかるほどだ。
ローレンが空を見上げて観察していると、スピアバードはこちらに気が付いたのか、急旋回してからこちらへと向かってきている。
「あー、こっちに来てくれるのか、助かるな」
「ちょっ、なに呑気なこと言ってんのよ!あんなのに刺されたら串刺しよ!!」
スピアバードは直情まで飛んでくると、高高度からいきなり急降下してその嘴を向けてくる。さながら急降下爆撃機のような格好だ。
ローレンは肩に掛けたショットガンを手に持ち、急降下で向かってくるスピアバードへと銃口を向ける。
―――――ドムッ――――
銃声に隣にいるセシリアが驚き、数秒後。スピアバードが超高速で地面へと落下する。
ベッシャっという音と壮大に砂埃を巻き上げて、スピアバードは墜落した。
「...えぇ...」
「けっこう危なかったな。ああやって急降下してくるのか。下手したら頭から足まで串になってたな」
「いや、そうじゃなくて!!あんな高速で動くものに当てられるの?!」
「あぁ、撃ってるのは散弾だからね。その中の1発でも当たれば急降下する鳥はバランスが崩れるだろうから」
ローレンはそう言いながら墜落してきたスピアバードを持ち上げる。見ると散弾が2発ほど直撃しているようだったが、致命傷と言えるほどのダメージを与えているようには見えない。死因は墜落による頭部の損傷および全身の打撲と言ったところだろうか。
「よし、じゃあまずは血抜きしようか。この状態なら持って帰ったほうが高くつきそうだし」
「え、えぇ、そうね」
ローレンは解体用ナイフを取り出してスピアバードの首元を切り裂く。そのまま足を持って血が出るように頭を下に向ける。5分ほどで出血は止まり、バックの中に1匹を丸ごと詰め込んだ。
「だ、だいぶ無理やり入れたわね」
「まぁ、ギリギリ?」
バックから鳥の脚がはみ出ていてとてもシュールな光景になっているが...
「じゃあもう1匹も探そう。空の索敵は頼めるか?」
「わかったわ」
2人は湖畔を歩き始める。数分後、またもスピアバードをセシリアが見つけ、全く同じ方法でローレンが撃墜する。
「ちょろいな」
ローレンはスピアバードの血抜きをしながら呟く。
「あんただけよ。私1人だったらもっと苦戦してた」
「スピアバードってどんな戦い方するんだ?」
「私は一度しか戦ったことがないから詳しくはないんだけど、急降下して攻撃した後は急上昇して、また急降下してって繰り返してくるのよ...」
「なるほど。まさに一撃離脱って感じか」
「一撃離脱?あぁ、まあそうね、良い例えね。だから急降下してきたところを狙うか、上昇中の動きが鈍っているところを狙い撃つかが基本ね」
「へぇ。あ、もう血抜きは良さそうだな」
「あ、私のバックに入れて、そっちはもう入らないでしょ?」
「あぁ、頼む」
2人の背中から鳥の脚が生えているように見え、滑稽というよりも子どもが見たら泣き出しそうな格好になっている。
「帰るか」
「えぇ」
2人はお互いの姿を見て、滑稽だと思ったのか、はたまた不気味だと思ったのか、ともかく自分の背中にトリノアシが生えているという格好をいち早く解くためにギルドへと戻り始めた。
「町に入ったらバックを背負うのをやめるか、死体を手に持っていこう」
「そうね」




