第58話
ローレンは3匹のデッドボアを斃した次の日、ランクアップのために必要なモンスターの素材を卸すため、朝早くからギルドのクエストボード前にいた。
(確か、モンスターの種類や卸す素材は何でもいいって言ってたよなぁ。でもさすがにゴブリンとかじゃあマズいだろうし...)
ローレンはギルド職員が貼り付け作業をしている近くで、なるべく邪魔にならないように依頼を見ていく。
その中に報酬もそこそこ良い依頼を見つけ、詳細を確認する。内容はスピアバード2匹の討伐。
「スピアバード...?嘴が槍のように尖っている鳥だったかな?」
「ねぇ、君ちょっといいかな?」
ローレンが小声で呟くと、不意に後ろから声がかかる。振り返ると見覚えのあるような、ないような顔の女冒険者がこちらへと視線を向けていた。
「えーと、どこかで?」
「あら?忘れたの?昨日デッドボアの素材を分けてくれたでしょ?」
ローレンは昨日のデッドボアの素材を分けた連中の顔を思い出し、その中の1人に目の前に立っている女がいたことを思い出す。
「あー。そういえば。で、何か用?」
ローレンは昨日の冒険者たちの態度を思い出して、やや不機嫌になりつつも女冒険者へと問いかける。
「いやぁ、ちょっと一緒に依頼を受けないかなぁーと思って」
女冒険者は見た感じ、魔法使い特有の杖を持っており、白のローブを羽織っており、その下にはレザーアーマーを着込んでいるようだ。魔法だけを極めたタイプの冒険者であることが窺えた。
ローレンは今日の目的が素材を卸すことだけだったのを思い出し、依頼を一緒に受けても構わないと思ったが、昨日まで一緒にいた連中と一緒に行動していないことを不審に感じた。
「昨日一緒にいた連中とはいかないのか?」
「えぇ、まぁ、数が多いとあんまり儲けが良くなくてねぇ。昨日ギルドから出て宿に戻ってから険悪な感じになっちゃってね。それで、まぁバラバラに行動してる感じかな」
「あぁ、まぁそうだろうね」
ローレンは昨日ひたすら悪態をついていた女冒険者を思い出して、苦笑いしつつも納得する。
「わかった、依頼を一緒に受けてもいい。報酬は5:5でいいか?」
「えぇ、もちろん」
「あと、その前に自己紹介がまだだったな。ローレンだ。冒険者ランクはGだ」
「私はセシリアよ。ランクは君と同じくG」
2人は軽く握手を交わしてお互いに名乗る。セシリアと名乗った冒険者は年齢は15くらい、白いローブのフードから少しだけ見える髪はピンクブロンド、顔はそれなりに美人、というより可愛いと表現したほうが適切な感じだ。
「ところで、受ける依頼だが、これにするつもりなんだが」
ローレンはさっそくセシリアに依頼書を見せる。報酬は銀貨12枚、素材も売ればもっと稼げるはずだ。
「あー、いいわね!幸いにも私は魔法が使えるしね!空飛ぶモンスターには最適よ」
セシリアが快諾すると、2人はギルドカウンターへと向かい、眠い目を擦っている受付嬢ジーンに依頼書を渡す。
「あれ、ローレンさん早いですねぇ、ふわぁ、眠い。えーと、スピアバードの討伐依頼ですね...はい、これで完了っと」
「ありがとう。あと聞いておきたいんだが、売れる素材と討伐部位を教えてくれるかな?」
「はい、まず一番高額なのは特徴でもある嘴です、次に羽、あとは肉です。討伐部位は尾羽です。血抜きだけして持って帰ってもらえるならそれでも大丈夫です」
「わかった。ありがとう」
「いえいえ」
ローレンはジーンに礼を言うとギルドの出口へと向かった。セシリアもそれに続いて歩いていく。
ギルドの扉を開けようとすると、2人の冒険者が向こうから扉を開けて入ってくる。
入ってきた冒険者はセシリアとローレンを見ると驚きの表情を見せた。
「あら、2人も依頼を受けに?」
セシリアが2人の冒険者へと話しかける。
(あぁ、昨日の連中の...2人だけってことはセシリアが言ってたことは嘘ではなさそうだな)
セシリアは何度か冒険者たちと言葉を交わすと、ローレンに続いてギルドから出た。
ローレンとセシリアは町の北側へと出て、目撃情報のあった北の湖方面へと向かった。
「そういえば、さっきの2人とは仲が悪そうには見えなかったな?」
「えぇ、私が喧嘩したのは愚痴ばっかり言う女だけだったから。他の人とはそこまで仲が悪くなかったし。でもアレがいるパーティーなんかいられなかったから出てきたって訳」
「なんだかめんどくさそうな奴らだ」
「えぇ...そうね...」
(まぁ人が3人集めれば派閥ができるって言われるくらいだからな。人間の本質はどこの世の中でも変わらないってことなんだろうな)
湖へと向かう2人はそれ以降は会話することもなく、数時間後に湖へと到着した。




