第54話
ローレンがドワーフ鍛冶師4人に製作依頼を出してからしばらく経ち、そろそろかなとローレンは鍛冶場へと向かった。
「おう!ローレン待っておったぞ。後は持ち手部分を作って終わりなんじゃ!アダンは木工も得意でな、持ち手の部分をローレンが握りやすいように作ってもらおうと思ってのう」
「じゃあさっそくやっていきますから、ローレンさん、手を見せていただけますか?」
アダンがローレンの手を触りながら、掌の幅や指の長さを綿密に測りながら、木材を削っていく。
1時間ほどでストックが完成し、本体と組み合わせて完成となった。
銃身はグリシア合金製で長さは以前のものと変わっておらず、薄っすらと光沢の中に綺麗な紫色が混ざっている。
ストックはローレンの成長に合わせてやや延長されている。木材もやや高級なものにされていて、重量のバランスも変わっていない。
可動部の構造は全く変わっていないが、それぞれの部品がグリシア合金に変わっており部品の耐久性が飛躍的に向上している。
全体重量はやや増えているが、全く問題がない範囲になっている。ローレンの筋力が増しているからなのかもしれないが。
「どうだ?完璧な仕上がりだろ?」
「はい、以前の物よりも銃のガタツキが少なくなっているし、グリップの部分もすごく持ちやすい。ストックの長さも完璧にフィットしてるし。」
ローレンは新しいショットガンを構えながら感想を言う。ダッソーたちは満足気に頷いている。
「さっそく試しにいかんかのう?」
ドミニクの一言で全員が頷き、鍛冶場から出て町の外へと向かう。いつもの場所へ着くと、ダッソーが鉄の棒を2本地面に突き刺し、渡し棒を掛け固定する。そこにアーマープレートを吊り下げて的を作った。
「ダッソーさん、わざわざありがとう」
「いや、いいってことさ、長い付き合いだろ?」
「じゃあさっそく撃つから離れててくれ!」
ローレンはショットガンに弾を込め、さっそく的へと撃ち込む。
「威力は変わってないな。重量が増えたから少しだけ反動が小さいかな」
「そうだろうな、グリシア鋼に変えたからと言って威力があがるわけもないだろ」
ローレンはさらに離れて的を撃つ。距離により威力減衰も変わっていないようだ。
ローレンはショットガンの弱点である遠距離での威力の改善を考えてはいるのだが、なかなか思いつくわけもなく...
「やっぱり遠距離だと弓の方が強いかもしれませんね」
アダンの一言はローレンに思いがけないヒントを与えた。
(矢か。ん?矢?フレシェット?!それだ!!)
「それだ!フレシェット弾だ!」
「おい、ローレンどうしたいきなり」
「散弾はいくつかの球形の弾丸を飛ばすんだが、その弾丸の形状を細長くして先を尖らせたものにするんだ」
「あー、確かにそれなら距離が遠くなっても対象に刺さりやすいかもしれませんね」
「とにかく、いったん鍛冶場に戻らないか?品質のいい火薬も手に入ってるんだ。せっかく新しいショットガンもできたんだし、弾薬についても改良の余地があると思うんだ」
ローレンたちは的を片付けると、ダッソーの鍛冶場へと戻った。途中で酒場によりトマト煮を食べたのだが、やはりドワーフたちには好評だった。
なにはともあれ鍛冶場に戻るとさっそくフレシェット弾の製作を開始する。
まずは入れる矢の数だ。大きさにもよるのだが、散弾のように散布する用途ではなく貫通力を増すために使うため、1つの矢は大きく太くする。すると中に詰められる数は6本になる。
次に形状だが、矢羽のような安定翼は付けずにただ先を尖らせた棒の形状になった。結局はショットガンの射程を補うための物のため、研究している時間はない。それに下手に無駄なものをつけて失敗するのも...という打算もあった。
次に使用する火薬はケリーから買った高品質な火薬草を加工したものだ。ローレンが時間をかけて作ったもののため市販品よりも質が良くなっている。
最後に矢の材料はもったいないかもしれないが、グリシア合金を使用することにした。コストは高いが硬度も高いグリシア合金ならばモンスターの皮膚など紙のように貫けるだろう。
2日後にはフレシェット弾が完成しローレンは試し打ちのため、冒険者ギルドへ行き手ごろな討伐依頼を受け、東の草原へ向かった。




