第49話
――――――ドムンッ
森の中でいきなり大きな音が響いたかと思うと、盗賊の1人の頭が木っ端みじんに吹き飛ぶ。
「「「は?」」」
いきなりの出来事に動きを止めた盗賊たちに強烈な下降気流が押し寄せる。3人の盗賊はいきなりの出来事に動けないまま風に押しつぶされ、身体を地面へと強く叩きつけられる。運の悪い1人は首があらぬ方向へと曲がっており、既に生命活動を停止している。他の2人も身体の複数個所が折れ曲がったまま吹き飛ばされている。
「なんだあ?!なんなんだぁ!!」
盗賊の頭と思われる者が叫ぶが、わざわざ出て行って名乗りを上げるわけもなく。その頭に鉄の散弾の雨を浴び、頭部を喪失すると勢いよく血液が噴き出し、一面を赤に染める。
「ひぃっひえぇええ!!!」
「た、助けてぇ!」
―――――ドムンッ――ドン――――――
銃声と風切り音が鳴り響き、しばらくすると、そこには既に人間の形を逸脱しているナニカが転がっているだけであった。
「大丈夫か?」
「えぇ」
「なんか雰囲気変わったな」
「そうかな?どうだろ」
「言葉使いも変わったぜ」
「戻しますか?」
「いや、好きにしたらいい」
「わかった」
「レナ!戻ったぞ、盗賊は俺たちの奇襲で全滅。死体は焼いてきた」
「イヴァン、早かったわね...(ローレンどうしたの?)」
「あぁ、まぁな(人を殺すっていう禁忌を経験して変わったんだろ。お前の周りにはいなかったか?)」
「(えぇ、まぁ、そうね、私はあんまりそこら辺気にしなかったけど...)」
「そういうことだ。クラムまで急ごうぜ」
イヴァンはローレンをチラと見て、心配そうな表情を一瞬見せるが、それがローレンにとってうれしくはない視線だと気が付くと、視線を外し、申し訳なさそうな気持ちになる。
(俺が言えることじゃないが、子どもには酷なことだ。もちろん子どもだと言って侮っているわけではない、だが、それでも...まったく冒険者以外の道もあっただろうに)
その日の夕方にはキャラバンはクラムへと到着し、ギルドの倉庫へと鉱石を運び込む。
ギルドと話し合いの結果、鉱石はギルドが買い取るということになった。グリシア鉱石の製錬には大量の燃料を消費すること、多額の利益を生みだすことによる面倒事の処理は冒険者には難しいことなどが挙げられ、ローレンたちはギルドへとグリシア鉱石を売却することにした。その売却益の中から御者や抗夫たちにも給料が払われることとなるが、それでも多額の報酬を受け取ることができた。
エリーにも報酬の分配がされた。本人が少額でいいと言ったことやそもそも参加する予定にはなかったこともあり、4人のうち最も少ない金額だったが、それでも1ヵ月は暮らせるほどの報酬を受け取っている。
「じゃあ今日は解散して、次の採掘に備えましょう。私たちのテントは持って帰って来たけど、それ以外は設置して来たって事は近いうちにまた行くことになるはずだし」
「あぁ、グリシア鋼を買えるだけの報酬は受け取ったが、まだまだ稼げそうだしな」
「ローレン、あなた変わったわね」
「もう冒険者からは抜け出せないところまで来たので」
「そう...ローレンが本気で冒険者を続けていくなら文句は言わないわ、でも乱暴な人だけにはならないでね。冒険者って粗暴な連中が多いから、染められないようにね」
「...うん」
「じゃあ解散!」
レナとイヴァンはすぐに帰り始め、ローレンとエリーも帰路についた。
「兄さん、雰囲気変わったよね」
「そうか?」
「やっぱり私に人を殺してほしくなかった?」
「...」
「そっか、ごめんね。私は冒険者にはなれないかも、今なら引き返せるってことでしょ?」
「...」
「兄さん、ごめんなさい」
「いや、かまわないよ。エリーの好きにするといい」
「うん」
「もう家に着くな、今日の献立はなにかな」
「ジルラドさんの料理おいしかったけど、やっぱりお母さんの料理が1番だもんね!」
ローレンとエリーは先ほどの暗い表情を打ち消して、意気揚々と自宅へと入っていった。




