第47話
秘境の花園へやって来た一団は、朝になると洞窟へ向けて出発する。
春も終わりに近くなってきた時期の花畑は、依然として綺麗な花々を咲かせている。
「季節が変わっても花の種類は変わらないのかな」
ローレンはどこまでも広がっているかのような花畑を見て、なんとなく呟く。
誰かが聞いているわけでもないが、ダンジョンに常識が通じるわけないか、と自己解決して思考を切り替える。
一行は荷馬車を4台引いて洞窟の前までやってくると、採掘道具などを降ろして準備を始める。抗夫たちのやる気に満ちた声がガヤガヤとうるさいが、不満に思っている暇もない。
「よし!じゃあ洞窟に入るぞ!洞窟の中の護衛は俺とローレンだ!荷馬車の護衛にはそっちの2人だ!」
イヴァンが抗夫たちに大声で指示を飛ばすと、抗夫たちは洞窟の中へと入っていく。ローレンもそれに続いて洞窟の中へと入っていく。
「まずはここだ!この小さな横穴を人と荷物が通れるくらいに広げてくれ!この先に鉱脈がある!」
洞窟の中でイヴァンの声が反響し、抗夫たちはさっそくとばかりにつるはしで横穴を広げるように掘り進んでいく。空間的な制約がある中でも、抗夫たちの採掘速度は早くあっという間に横穴は2メートルほどの幅へと広がってしまう。
「は、はやい」
「こんなもん朝飯前さ、この先に鉱脈があるのか?」
「はい、自分が先導しますから、ついてきてください」
「おう」
ローレンは抗夫たちの先頭に立って、広がった横穴を通り抜けて、洞窟の奥へと進んでいく。
しばらく暗い洞窟をランプの明かりを頼りに進んでいくと、洞窟の先に光が見えてくる。
「これは...?」
「ダンジョンの天井はあのように薄っすらと光るんだそうです。つまりここから先は完全なダンジョンだということだと思います」
「なるほどな、ダンジョンだとは言われているが今までモンスターが1匹も出てこなかったからな。ここから先が本当のダンジョンってわけか」
抗夫のまとめ役でもあるヘンリクに説明するとすぐに理解してくれているようだ。まさに脳筋な見た目だが、しっかりとしたところもあるらしい。
なにはともあれ、そこそこ広い空間に出た一行は、その天井の高さに驚き明るさに驚く。
「ここに鉱脈がある。ここを採掘してくれ。この奥はまだ未探索エリアだが、出てくるとしてもゴブリンくらいだろう、あんたら抗夫なら一瞬でやれる相手だとは思うが、俺たちが護衛する。だから採鉱に全力を注いでくれ」
イヴァンが抗夫たちに説明すると、抗夫たちはさっそく鉱石の採掘を開始する。
ダンジョンの中であるというのに冒険者でもない者が鉱石を採掘するというのは、常識的に考えてあり得ないのだが、幸いにもこのダンジョンにはモンスターなどが現れない。なぜ、ダンジョンなのにモンスターが現れないのかに関しては、学者であるマテウス曰く『ダンジョンが創世期だから』ということらしい。
この説は前例があるらしく信憑性もあるのだろうが、モンスターが出てこないダンジョンがダンジョンであるといえるのだろうか。
などと抗夫たちを見ながら考えているローレンだったが、いくら考えたところでわかるわけもなく、護衛に集中していく。
3時間ほど経つと、鉱脈からある程度の鉱石が掘り出され、広くなった空間の中央部に寄せ集められている。既にその量は膨大になりつつあり、抗夫たちの3割が洞窟の外へと鉱石を運び出し始めている。
だが、1時間後には抗夫たちがバテて、1日目の採鉱は切り上げることとなった。
全員で採掘した鉱石を硬い袋に入れて地上へと運んでいく。数回往復しすべての鉱石を運び出す頃には既に日が傾き始めていた。
ゴトゴトと音を立てながら荷馬車はキャンプ地へと進んでいく。既に1台目の荷馬車は鉱石が満載されており、非常にゆっくりとキャンプ地へと向かう花畑を進んでいく。
「これなら他の荷馬車にも分散して積んだほうが良かったかな?」
ローレンが言うと、周りの者達もやや困り顔で頷いている。ここまで速度が遅くなるとは思っておらず、全員が同じ荷馬車へとせっせと鉱石を積み込んでしまったのだ。
「そうね、今日は全部の荷馬車を持ってきたけど、明日からはキャンプに荷馬車を置いてきたほうがいいかもしれないわね」
「そうですね、1人が見張りとして残っていれば大丈夫だと思いますし。洞窟内で抗夫の護衛をするのも1人で大丈夫そうですし」
「そうね、じゃあ明日からは1台だけ荷馬車を引いて行って、満載になったら帰還でいいかしらね」
レナが言うと、御者たちや抗夫たちも頷き、全会一致といった形になる。
それからは特に何事もなく、採掘が進んでいく。
夕飯は毎回ジルラドが作ったために、誰からも不満が出ることはなかった。抗夫たちもうまいものを食べれるため士気が高く、鉱石の採掘効率が落ちることもなく、3日もするとすべての荷馬車が満載になった。




