第45話
ローレンたちのキャラバンはダンジョンに到着し、キャンプの設営を開始する。前回来た時と同じ場所に10個のテントを環状に設置し、中央に焚火と簡易的な調理設備を、さらにすこし離れたところには簡易的なトイレすら設置された。
「はえ~すごいねぇ、どこまでも花畑が続いてるみたい」
「えぇ、そうね。ダンジョンじゃなければ観光名所になりそうなものだけど...」
「レナさん、さすがにそれは...いや、近くに開拓地を設けて人を呼んで村を興せば...」
「なぁ、それよりも早く飯にしねぇか?昼食ってないから腹減ってさ」
イヴァンの言葉を聞き、それぞれがそういえば腹減ったななどと思い出して、簡易的な調理設備の方へ向かった。
そこにはギルドから派遣された男が1人、調理設備の確認などをしている。ギルドから派遣されたとは言っても、ただの雑用係なのだが、それなりに給料が良いらしく文句も言わずにせっせと作業を行っている。
「あ、今から夜飯を作りますんで、1時間ほどで用意できますから」
男はローレンたちに気が付くと、その表情を見て察したのか、食事の準備を開始した。荷馬車から野菜やら肉やらを運び出してさっそく調理を開始するのだが、男は手際よく調理をしている。ただの素人ではなかったようだ。
総勢26人分の食事を1人で1時間で準備するのだから、簡単にできるものではない。
ギルドも今回の事業の成功を全力で後押ししたいのだろう、この男の人件費はギルド持ちなのだ。
「じゃあ、今のうちに見張りの順番を決めましょう。今回はキャンプが広いから2人1組に分かれて見張りをしましょう。前回のアレを見た後だとねぇ?」
「あぁ、あれはヤバかったな。キャンプの規模がデカいから見張りも多いほうがいいだろ」
「はい、じゃあグループ分けはどうしますか?」
ローレンはグループの分け方を提案するが、そこはレナが強権発動、というかエリーに配慮してローレン・イヴァンの組とレナ・エリーの組み分けに決められた。
「じゃあご飯食べたら見張りを始めましょうか、時間はどう分けますか?」
「そうね、順当に半分ずつかしら。6時間ずつね」
「長くなるが、2人で見張りするなら居眠りすることもないだろ」
「そうですねー」
全会一致で決まると、4人はそれぞれが食事の時間までフリータイムとなった。まだ明るいこの時間帯ならモンスターが出てきても誰かが気付くだろう。
ローレンは特にすることもなく、軽くショットガンを整備し、キャンプの中をぶらついてみる。
まずは抗夫たちのテントだ。3つのテントに総勢18人が入って寝る予定らしい。なんとも窮屈そうだが、彼ら曰、むしろ広々としているんだとか。抗夫の労働環境の悪さはかなりのものらしい。
次に、荷馬車の御者たちだ。鉱石採掘の際は洞窟の前まで荷馬車を移動させる役割があるため、キャンプで休養というわけにはいかない。むしろ、そうなっては護衛を2手に分けなければいけなくなってしまう。荷馬車は4つともそれぞれテントにいれてあり、4つものテントを占有しているのだが、万が一盗賊に目を付けられると厄介なため、見えないようにしまってあるのだ。
そして冒険者用には2つのテント、男女別れて寝れるようになっている。
最後に雑用(有能)のテントが1つ。小さいテントだが、1人で使える唯一のテントだ。
ローレンは一通り位置などを把握すると、キャンプの外に行き、腰を下ろし、沈んでいく夕陽をただ眺めた。時間の潰し方が下手くそなのは本人が一番わかっているだろう。
だいたい1時間たち、キャンプの中から良い匂いが漂ってくる。おそらく肉と野菜のシチューだろうか、キャンプの外まで香りが届いてくる、キャンプの中の者は今頃匂いに誘われて腹を鳴らしているだろう。
キャンプに戻ると既にほとんどの者が中央の焚火を囲んでシチューを喰らっている。パンは若干固い黒パンだが、シチューで柔らかくして食べているようだ。
ローレンも雑用(有能)からシチューの入った木皿とスプーンを受け取り、レナたちが座っている近くに腰を下ろした。
「あら、どこ行ってたの?先に食べ始めちゃってたわよ」
「ええ、時間潰してたら匂いに気が付かなくって...」
「しかし、これ美味しいわね。店で食べる熟成されたシチューもいいけど、作り立てのもいいわね」
木皿に入っているのはビーフシチューと言えばわかるだろうか、日本で言うところのシチューと言うとクリームシチューの方が一般的だが、こちらではむしろクリームシチューの方が珍しいようだ。
「はい、入っている肉もほろほろと崩れないしっかりした噛み応えがあります」
「えぇ、野菜類も溶け足りしてないのもいいわね。野菜類が溶けてもコクがあっていいんだけど、私はこっちのほうが好きかも」
ローレンとレナはシチューの味について話しながら食事をするが、イヴァンとエリーはそんなこと気にも留めずに、がつがつとシチューを喰らっている。
「まだまだシチューはあるから!がっつき過ぎないようにお願いしますよぉ!おかわりもまだまだありますから~!」
有能は鍋の蓋を叩きながら、がっついている者どもへ声を上げるが、おかわりがあると聞いた途端に目の色を変えてがっつき始める者も出来る始末。
すぐにシチューの鍋の前には長蛇の列ができ、おかわりを求める者たちで溢れかえった。




