第44話
ローレンは怪我をしてからとにかく空腹と疲労感に悩まされていたが、だいたい2日経ったため、だいぶマシになってきてはいる、だがそれでも未だに後遺症が残っている。いや、後遺症と言えるほど酷い症状ではないし、日常生活に影響を及ぼすほどでもないのだが...空腹感が長く続くとなると食費の増加は懐に痛い。
等と考えつつもローレンは自室のベットの上で体を起こす。まだ朝日は昇ってきていない。
「確か朝の鐘が鳴るころにギルドの前だったか...」
と頭の中で情報を整理しつつ、眠気を少しずつ拭っていると。
「兄さん起きてる?」
エリーが部屋に入ってくる。あぁ、そいえば今回エリーが参加するんだったなと思い出し、ベットから出る。
「あぁ、今起きたところだ。今から準備するよ」
「ん、じゃあ朝ごはん作っとくね」
「あぁ、わりぃな」
ローレンはエリーが部屋から出ていくと、いそいそと着替え始める。いつも通りにショットガンを肩にかけ、ベルトに弾帯を付けて弾薬を詰める。バックパック、(というよりはリュックサック)を背負う。
ローレンは準備を終えるとリビングに行き、エリーと朝食をとる。といってもバタートーストだ、エリーが絶望的に料理がアレなのを忘れていた。
なにはともあれ、2人は食事を終えると家を出て待ち合わせ場所へと向かった。町はいまだに静まり返っており、ごく一部の朝が早いタイプの住民たちが家の中で朝食の準備などを行っている。気温はこの時期にしては低く少し肌寒く感じたが、昼頃にはいつもと同じくらいに気温は上がってくるだろう。
ギルドの前に来ると、何度か話したことのあるギルド職員が荷馬車の点検などをしていた。荷馬車の近くにはそれぞれに1人ずつ御者と思われる人物がおり、若干冷える朝の風に体を震わせている。
ギルド職員は近づいてくるローレンを見つけて挨拶してくる。
「おはようございます、まだ出発まで時間があるのでギルドの中で待っていても大丈夫ですよ」
「あぁ、いや、ここで大丈夫です。そこにいるのは全員御者の方で?」
「はい、2人はクラムの方ですが、もう2人は隣町からお呼びしました。荷馬車も隣町の方からギルドが借りたものです」
「へぇ、今回の採掘はかなり大きな仕事になっているんですね」
「えぇ、そうですね。ギルドもグリシア鋼を流通させてもらえればそれなりに稼げるので」
「稼げる?というと?」
「ギルドでは遠距離輸送でも比較的安価に運べるルートがあるので、商人たちとは別口で稼げるんですよ」
「なるほど、商人たちは基本的に近辺での取引が多いでしょうがギルドなら遠方や国外との取引も比較的容易にできると」
「そういうことですね。ですのでこうやって隣町から荷馬車を借りてくるようなこともやったわけです」
ローレンがギルドの職員と話していると、レナやイヴァン、ヘンリクたちが徐々に集まってくる。朝の鐘が鳴るまでには全員が集合する。
「あ、そうだ。あのこれ、リンジーさんが来たら渡して置いてください」
ローレンは思い出したようにギルド職員に布袋を渡す。
「えぇっと、これは?」
「リンジーさんに助けられたのにお礼ができてなくて...本当は直接渡したかったんですけど...」
「あぁ、そういえば...わかった、君の命の恩人にしっかりと渡しておくよ」
ギルド職員は今まで忘れていたが、ローレンはデッドボアに瀕死の怪我を負わされていたのだ。それを助けたのがリンジーだったことも。
「よし、じゃあ行くわよ~」
レナが先頭に立って出発の合図を出すと、馬車がゆっくりと動き始め、それに従って坑夫たちも歩き始める。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
ローレンはギルド職員に別れを告げて、その列に加わって歩き始めた。
町を出て、秘境の花園へと向かって進んでいく。朝の早い時間に町を出ているが、荷馬車の速度を考えると到着予定は夕方ごろになるだろう。
こういったように荷馬車を並べて移動する集団をキャラバン、というらしい。元の世界では砂漠の商人たちが賊に襲われないように複数集まった集団のことをキャラバンと言っていたので、だいたい同じ意味だろう。
ローレンとイヴァンはキャラバンの前方を、レナとエリーがキャラバンの後方に付き護衛する。
そして何事もなくキャラバンは秘境の花園へと到着する。




