第40話
ローレンは良く晴れた朝の空を見ながらギルドへと向かっている。昨日の雨は夜中には止んでいて、今は雲一つない空が広がっている。それでもところどころにできた水溜りが昨日の雨の量を物語っている。
ローレンがギルドに着くと、冒険者たちの出入りがもっとも多い時間帯で賑わっている。ギルドの正面ではギルドの職員がローレンを待っていたようで、ローレンを見ると声を出して呼び掛けてくる。
「おはようございます、ローレンさん。こちら荷車とそれを引く人も用意しました」
ギルド職員が言うと、いつだったかイヴァンと一緒にオーガを倒したときに死体を運んでもらった人たちに挨拶する。
「あ、オーガの件はどうも」
「あぁ?あー、あん時の坊主か。今回はデッドボアだって?」
「はい。東に1時間ちょっと行ったところにデッドボアの巣を確認しました。これから討伐と回収に向かいます」
「あいよ。東の草原か、昨日の雨でぬかるんでないといいんだがな」
ローレンはギルド職員に礼を言い、町の出口へと進んだ。
東の草原地帯に入ると荷車がぬかるみに嵌ってしまう。2人がかりで引いているため、抜け出せないことはないのだが、目的の場所に着くまでに3時間ほどかかってしまう。
「ここです。岩場の外で待機していて下さい」
ローレンは目的地に着いたことを知らせ、待機させる。
「はぁ、やっとかぁ、はぁ、さすがにしんどいぜ...はぁ」
ローレンは昨日と同じように岩に登り、そこから巣穴の様子を確認する。中がどれほどの広さなのかは相変わらずわからないが、昨日とは違い、巣穴の入り口の部分が土手のように盛り上がっている。おそらく雨水が入り込むのを防ぐためのものだと思われる。
ローレンはその土手がほとんど崩れていないことから、まだ中にデッドボアがいる可能性が高いと考えた。
巣穴がある岩に登り巣穴の真上まで行き、そこから何個か石ころを巣穴の目の前に落としていく。
すると案の定、デッドボアがその音を確認するために巣穴から這い出してくる。入り口にある土手を崩しつつ、ノシノシと出てきたデッドボアに照準を合わせる。
ローレンが落とした石ころを見つけ、臭いを嗅いでいるデッドボアに真上から射撃する。
―――――ドムンッ――――――――
真上から放たれた散弾によって頭を粉砕されたデッドボアは一瞬で絶命する。
「ふぅ、やったか」
ローレンは岩から降り、デッドボアを確認する。完全に息はなく、死んでいることを確認すると、ローレンはその場で荷車を引いていたおっさんを呼ぶ。
岩場の外で銃声を聞いていたおっさんたちは何があったんだ?という顔で岩場の中を荷車を引きながら進んでくる。ローレンの足元にデッドボアの死体があるのを見て、安堵しつつも驚きを隠せない。
(あの坊主、いったいナニモンなんだ。この前は魔法使いがオーガを倒したもんだと思っていて気にしていなかったが...)
「あ、来た来た。こっちです」
荷車が到着すると、2人がかりで荷車にデッドボアの死体を載せる。
数百キロあるだろう死体をなんとか荷台に載せ、街に戻ろうとした時だった。巣穴からもう1匹、デッドボアが出てきたのだ。
ローレンは咄嗟にショットガンを構えて撃つが、あまりにも咄嗟だったために初弾を外してしまう。
「まずい!逃げて!」
ローレンはデッドボアの狙いが荷車を引いてきた2人に向かないようにしつつ、2人に叫ぶ。だが。
「ブルルルルゥッ!」
デッドボアは荷車を見て、そこに死体が、自分の番の死体があるのを見て激昂する。
ローレンは荷車の方が襲われるのはまずいと思い、狙いを付けずにショットガンを撃つ。もちろん狙いも付けずに放たれた散弾はデッドボアに当たることはく、デッドボアの気を引くことすらできなかった。
デッドボアはそのまま荷車の方へと突進していき、デッドボアの死体を引きずり降ろす。
だが既にデッドボアが死んでいるのを理解すると、さらに激昂する。
「ゴガァアアアアアアアア」
今までに聞いたこともない鳴き声を上げつつ、ローレンへと突進してくる。
反撃することができないほどの速度で突撃してくるデッドボアを紙一重で回避するローレンだったが、回避した先にはぬかるんだ地面があり、ヌプっと足を沈めてしまう。
振り返って再度の突進を仕掛けるデッドボアを確認したが、すぐに脚を動かすこともできずに、ローレンはその場でショットガンを撃つ。ドムンッ、と放たれた散弾はデッドボアに間違いなく命中し、血しぶきを上げるがそれでもデッドボアは止まらずに突っ込んでくる。
そのままローレンを突き飛ばしたデッドボアは倒れたローレンの頭を、己の牙で串刺しにしようとするが、ローレンも刺されまいと抵抗する。
ドンッドンとデッドボアは押し倒したローレンを踏みつける、そのたびに血反吐を吐くローレンだが、なんとか腰に下げたナイフを取り出してデッドボアの喉にそのナイフを突き立てる。
だが、デッドボアはそれでも諦めずにローレンを牙で刺し殺そうともがき続ける。
全身の血が抜けていく感覚を覚えながらも、牙を振りかざすデッドボアだったが、10秒ほどすると動きを鈍くし、その10秒後には動きを止め、崩れ倒れる。
「+*#&+?*&お$!×い!しっか*”ろ!?」
ローレンは朦朧とする意識の中で、声が聞こえてくるのに気が付く。
(あぁ、そういえば、デッドボアに押し倒されて...)
「>*@%&た!?」
「?!*‘^=”&」
(あぁ、誰だろう、何人かいるみたいだ)
ローレンはそのまま意識を闇の中へと沈めていった。




