第27話
洞窟の奥で見つけた鉱石とまだ採取されていなかった植物のサンプルをキャンプに持ち帰る。
まずは植物のサンプルと鉱石のサンプルをマテウスに渡す。
「これは...鉱石か。鉱石があったのは朗報だな。少し帰還を延長しよう。この鉱石を解析する必要があるが、鉱石にはあまり詳しくなくてな...今日中には解析が終わるだろうから、明日の朝に町に戻ることにしよう」
ローレンたちも何の鉱石なのか気になっていたのでそれを了承する。さらに、見つけた洞窟のことも報告する。墓の洞窟にあった小さな横穴の奥はかなり奥まで続いていたようだった。
「なるほど、洞窟か。とりあえず、今回の調査で鉱石があることが分かった以上は、ここに本格的なキャンプを建ててのダンジョン攻略が行われるだろうな」
マテウスは言いながら鉱石の解析を始めている。彼はまずは図鑑にある鉱石と照合しているようだ。彼に邪魔する必要もないのでローレンたちはキャンプで休憩することにした。夕方までもうしばらく時間があったのでローレンは昼寝をし、イヴァンは近くで魔法の練習を、レナはテントに入っていった。
夕方になり、夕食の準備をする音が聞こえ、ローレンは目を覚ます。
テントから出ると、イヴァンとレナ、助手の3人が夕食を作っていた。
「起こしてくれればよかったのに」
ローレンは言いながらさっそく手伝い始める。
「おう、ローレンか、別に飯ができるまで寝てても大丈夫だったんだけどな」
「そうよ、初めてのダンジョンで疲れてるでしょう?」
イヴァンとレナはローレンが疲れて寝ているのを見て、起こせなかったらしい。
「いえ、もう大丈夫ですよ」
ローレンはそう言って夕食の準備を進めた。
夕食のメニューは助手が昼間に採取してきた山菜と干し肉のスープと乾パンだった。
夕食を食べながら、ローレンたちはマテウスに鉱石について尋ねてみた。
「鉱石の種類はおそらくグリシア鉱石だな。見た感じは普通の鉱石だが、精錬すると綺麗な紫色になる鉱石だ。魔力がある金属になるから装備品や装飾品に加工されるのが多いな」
3人はそれを聞いて喜ぶ。もちろんダンジョンで採掘した鉱石はそのまま自分の物として持ち帰ることができるからだ。ダンジョンが近くにある町はそれだけリスクも背負うことになるが、もたらされる富は計り知れない。
「鉱石のサンプルは返そう。だが、1つは持ち帰りたいので買わせてほしい」
ローレンたちはまたダンジョンに来れば採掘もできるので、マテウスに鉱石を1つ売ることにした。
グリシア鉱石は希少価値が高いのだが、未精錬ということもあって、拳サイズの鉱石を銀貨1枚で取引した。
因みにこの鉱石、10キログラムを製錬すると10グラムほどがグリシア鋼として生成できる。ちなみに使用する燃料も石炭30キログラム以上は必要になるらしい。
「鉱石をどれだけ持って帰れば利益になるんだか...」
イヴァンはそのあまりにも非効率な数字にあんぐりとしている。
「だが、グリシア鋼はミスリル鋼やエリュトロス鋼なんかと同等の価値があるんだぞ?炉が問題だが、精錬された物ならばグラム当たり銀貨1枚...いや、それ以上の価値になるだろうな。ほとんど市場には出回らない貴重な素材なんだぞ?」
マテウスはイヴァンを見て呆れたように説明する。
その説明を聞いたイヴァンとレナは目に$が浮かんでいるような表情で話に食いついている。10キロの鉱石を持ち帰り、石炭代や炉のことを度外視すれば、銀貨10枚以上になるのだ。さらにクラムならば鉱業の技術が進んでおり、製錬はそこまで難しくはないだろう。
何はともあれ、そんな会話をしながらも夕食を終える。3人は見張りの順番を決めてさっそく仕事にとりかかった。
今日はイヴァンが最初の見張りだ。その次にローレン、レナと続く。
なんということもなく、ローレンの番が回ってくる。
ローレンは真夜中のキャンプの見張りをする。どうということはない、そう思っていたのだが...
「ねぇねぇ、お兄さん」
ローレンは若干気を抜いて見張りをしていたせいもあって、ビクッと一瞬だけ身体を強張らせるが、話しかけてきたのは先日にも会った少女だった。
ローレンがそれほど驚いていないのがとても不自然なのだが、どういうわけか、ローレンはそう言ったモノに対する恐怖心がなかった。
「あぁ、君か、びっくりした」
「驚かせるつもりはなかったんだけどなぁ」
少女は至って普通に話しかけてくる。まるで町の中で出会ったような表情でお互いに会話を交わす。
「いや、僕が勝手に驚いただけだから。ところで何か用かな?」
「ううん、暇だから来てみただけ。お兄さんは何してるの?」
「僕?見張りだよ。モンスターとかがいつ襲ってくるかわからないからね」
「モンスターはここにはいないよ?」
「そうだね、でも念のために見張りは必要でしょ?それにここら辺には少ないけど、野盗が出るかもしれないだろ?」
「ふーん、私にはよくわからないや」
少女は急激に興味を失う。その態度が若干気にはなったが、そこまで気には留めない。
「ねぇねぇ、お兄さん。いつまでここにいるのぉ?」
「うん?あー、今日までかな」
「え?...」
少女は驚いた顔をし、俯きながら何かをボソッと呟く。その声はローレンには聞こえなかったが、なにか不穏な空気が流れ始める。
少女は何かを呟いた数秒後、すっと夜の闇の中へと消えていった。その一瞬のうちに見えた少女の姿は透けていて、不気味で、足が見えなかった。
「やっぱり、俺はおかしいのか?」
ローレンは自分の正気を確かめようとするが、その前に異変に気が付く。
ローレンは何かの気配を感じ、暗闇の中に目を凝らした。
「イヴァン!レナ!」
ローレンは緊急事態を伝えるため、大声で2人の声を叫ぶ。今まで呼び捨てにしたことなどなかったが、緊急事態の時にそれを考えてる暇はなかった。
ローレンが叫び終わったとき、暗闇から何かがうごめきながら出てきた。
それは...茨の木のように棘が無数に生えた触手のようなものだった。
明けましておめでとうございます。
読んでくださっている皆様に最大の感謝を。




