第20話
ローレンたちは3時間ずつ夜間の警備をすることにした。
まずはローレンから警備をする。まだ夜になって間もないが辺りは既に暗くなっており、月明かりに照らされた草原と花畑が見える。そよそよと夜風に揺れる草原と花畑はここがダンジョンであるということを除けば、休日のキャンプとでもいえるような環境だ。
ローレンは特に異変がないままレナと警備を交換する。3時間はレナが持ってきた砂時計を使って計る。手に載るような小さな砂時計だが、どんな仕組みなのか1~6時間に調節できるらしい。
話を聞くところによると『錬金術』によって作られた物らしい。錬金術と聞くと等価交換で何でもできる便利なものと思うかもしれないが、基本的には一部の魔力を持ったアイテムとアイテムを組み合わせる技能のことだ。おそらくこの砂時計も中身の砂に魔力的な作用があるのだろう。
ローレンはあてがわれたキャンプに入ると、イヴァンはすやすやと寝袋に包まり熟睡していた。よくこんなところで熟睡できるなとは思うが、浅い眠りだと体が休まらずに疲れが取れないため、野宿でもきちんと眠れるというのは冒険者としての技能の1つでもあるだろう。
ローレンはそんなイヴァンを若干うらやましく思いながら、自分の寝袋に入って目を閉じた。
寝袋に入るといざというときにすぐに動けないのでは?とも思ったが、今はそこまで危険な場所にいるわけでもないため、気にしないことにした。
ローレンは自分が眠ってしまっていたことに気が付く、目を開くとレナがイヴァンを起こしていた。あれから3時間たったようだ。
イヴァンは割とすんなり起きると大きく伸びをしてテントから出て行った。
そしてなぜかレナが同じテントの中で寝始めた。え?同じテント?女性の助手のところで寝るんじゃないの?と内心叫んでいたが、レナはそんなローレンに全く気が付く様子もなく寝袋に入って寝息を立て始めた。
(寝るのはっや!)
1分も経たずにレナは眠ってしまったようだ。ローレンはレナが気になって全く寝れなかったので、テントから出て、まだ火を保っている焚火の側に座って薪を足す。イヴァンがローレンに気が付いたが、何かを察したような顔でローレンを見るが、すぐにその場を離れた。
ローレンは持ってきていた紅茶を焚火で沸かしながらキャンプの外を見る。とくに何かあるわけでもないが、一面の花畑を見ていると何かもやもやしたような気持ちが湧き上がってくる。どこかで見た景色、そんな気がするのだが...
ローレンは沸かした紅茶を飲みながら空を見上げる。もやもやした気分を晴らすために満点の星空と大きな月を見る。前世の記憶で見た夜空にはいくつかの、数えられるくらいの星しか見えなかったが、今見ている夜空はどこまでも続く天の川がある。その天の川は視界の端から月を貫き視界の端までいっぱいに広がっている。
ローレンはしばらく空を見入っていると、イヴァンが交代を告げる。3時間もの間、空を見上げていたことに気が付き、ローレンは自分で自分に呆れかえった。
もやもやしていた気分もすっかりなくなり、ローレンはまたキャンプの警備を始める。イヴァンもローレンと同じでテントで寝ているレナを見て、ローレンと同じように焚火で何かを沸かしている。
ローレンはキャンプの外を警戒する。とくに何か危険があるようにも思えないのが。
ローレンは特に眠気を感じるわけでもなく見張りを続ける。
やがて空が白み始める。朝陽が出てくる時間までしばらくあるだろうが、空が明るくなり周りの景色も闇の中からあらわになる。昨日と同じ景色が薄白く照らし出されている様は少しだけ幻想的だ。
やがて朝陽が丘から見えるようになるとあたりは明るくなり朝が来た、ローレンは腹が減ってきたために全員を起こして朝食を作ることにした。
まずはレナを起こし、マテウスと男の助手を起こす。女の助手はレナが起こしてくれたらしい。
朝食は調査班が持ってきていた麦を使った粥だ。塩で味付けされてはいるが味気なさを紛らわすことはできない。
朝食をとりながら採取目標を聞く。花畑の入り口付近の植物は既に採取済みとのことだったため、しばらく進んだ場所でのサンプル採取になる。採取した植物は特殊なガラス瓶に入れて持ち帰ってくれとのこと。このガラス瓶も錬金術によって作られた物らしく、内容物を傷まないようにする効果があるらしい、もちろん限度はあるが。
さらに先に進んだ場所で鉱物の採取も可能ならしてくるようにとのことだ。鉱物を採取できる場所があるようには思えないが、採掘用の小型ピッケルを渡された。
食事を終えるとローレンたちはダンジョン『秘境の花園』へ足を踏み入れた。
更新ペース遅くて本当に申し訳ない。年末だからねしょうがないね。




