第13話
ローレンは飲食店で鶏肉料理を味わっていた。朝は食べていなかったため楽々平らげてしまう。一緒に来たレナも、朝食をとっていなかったために牛肉の煮込みはあっという間に無くなってしまう。
そして店員が食後を見計らって出してきたのがパフェだ、見た目はこちらの世界で一般的なパフェだと言える。ローレンとレナは興味津々でパフェを見つめる。
「これが噂の...」
「パフェですか」
ローレンはさっそく、スプーンですくって一口食べる、レナはその様子をまじまじと見ているようだ。
どう?どう?と目線で尋ねてくるレナにローレンは微笑みながら答える。
「これは...美味しいですよ。甘いです」
それを聞いたレナは素早くスプーンでパフェを食べる。まさに神速とでも表現できる速度だ。
「これは...甘い!!」
さらに食べ進めていくと何やら中間地点に果物らしきものが入っている。色は桃に近く白い、舌触りはプリプリ、味はライチに近い。とローレンは思った。
そのまま無言ですべてを食べつくした2人は大満足で店を出た。
「美味しかったね!ローレン!また来ようね!」
「あはは、そうですね。ところでパフェに入っていた果物って何かわかりますか?」
「あぁあれはレリチっていう果物よ。確かどこかの町で栽培されてるとか?」
「へぇそうなんですか、初めて食べました」
「じゃあこの後ギルドに行って報酬を受け取りに行きましょ」
「はい、分け前は6:4ですからね」
「わかってるわよ」
2人はギルドへと向う。昼過ぎの町は比較的静かだ。
ローレンとレナがギルドに入ると中は閑散としていて、朝の混雑が嘘のようだった。
レナがギルドカウンターへ行き、報酬を受け取る。全額で銀貨14枚の報酬だ。
レナとローレンはギルドに併設されている酒場のカウンターに座って報酬を分配する。酒場のマスターはこの時間には不在らしい。
「さて、ローレン。報酬はいくらだったでしょう!」
「銀貨14枚です」
「...じゃあ6:4で分けたらいくら?」
「...レナさんが銀貨8枚と銅貨4枚、僕が銀貨5枚と銅貨6枚ですね」
「...」
「...?」
「そんな計算法、だれに教わったの?」
「え?」
この場合の計算方法は14*0.6と14*0.4で求められる。おそらく小学校の4~5年生くらいで習っただろうか。12歳の覚えのいい現代の子どもならばさっと出てきてもおかしくはないだろう。だが、義務教育がない、いや教育機関すらない田舎の町で12歳の子どもがすらすらと計算法を導き出し、暗算で小数点付きの掛け算をやったのだ、普通に考えておかしいだろう。
「え?あ。あの...いや、あってましたか?あはは、」
「まぁいいわ。そこら辺の冒険者ならだいたいちょろまかすことができるんだけどね?」
「レナさん...一体何してるんですか...」
「えへへ~。まあそういう冒険者もいるってことよ。ローレンも気を付けるのよってその必要はないわね」
レナとローレンは報酬を分け合う。報酬は銀貨だけで貰ったのでローレンがおつりを出した。
「ローレンは冒険者になんてならないで商売でもすればいいのに」
「それって退屈じゃないですか?」
「え?」
ローレンはそっぽを向いて少し小さな声ぼそっと答える。
レナが何か言おうとしたときにちょうど酒場のマスターがカウンターの奥から出てくる。少しだけむっとした顔をするが朝の行儀のいい小僧だと気が付くとすぐに表情を戻す。
「あ、マスター。すいません、適当に何か」
そう言ってローレンは小銭を出す。マスターは少しだけ機嫌の良さそうな顔をしてグラスを取り出す。朝に出された酒とは別の酒が注がれる。もちろん2人分だ。
「え?あたしの分も?まぁどうせこの後暇だからいいけど」
「レナさんはなんで冒険者になろうと思ったんですか?」
「いきなりね...そうね、今までが退屈だったからかな?」
「自分も同じような理由ですよ。なんだか平凡に生きて平凡に終わるのってつまらなくないですか?」
「えぇ、でもそれは捉え方次第じゃないかな?」
「...確かにそうですね。誰かにとっては平凡でも誰かにとっては平凡じゃない」
ローレンは酒を少しだけ飲む。12歳の少年の舌では普通は美味しく感じることはないだろう。だが前世の記憶には酒の味の記憶も残っているために、体は不味いと感じるが、精神では美味しく感じるらしい。
「...」
「...」
ローレンとレナはそのまましばらく少しずつ酒を飲んだ。
「じゃあ僕は帰りますね」
「ほぇ?あぁりょーれん帰るの?」
レナはいつの間にか酔っぱらっていた。12歳のローレンはほぼ素面であるが、レナは顔を真っ赤にして酔っぱらっている。
「お酒弱いんですか?!」
「えぇ、そんなことぉないよぉ?マスターもう一杯!」
「やめとけ嬢ちゃん。ここで吐かれちゃ困る」
ローレンはレナを放って帰れるはずもなく、困った顔をして周りを見渡す。そしてギルドカウンターにいるジャックを見つける。ちょうど何かしらの依頼の報酬を受け取っているようだ。
「ジャックさん!」
ローレンはカウンターでべろべろになっているレナを置いてギルドのカウンターに向かう。
「おう?ローレンか、どうした?」
「レナさんが酔いつぶれちゃって...その...」
「はぁ...またか...あぁ、いいよ俺が面倒見とくから」
「すいません。自分は先に帰るので」
「あぁ、ちなみに今日は何の依頼受けたんだ?」
「レナさんに誘われて採取に」
「そうか」
「はい、それじゃあ」
ジャックに別れを告げてローレンはギルドを出た。日が傾き始めて太陽の光の色が変わり始める時間帯だ。
ローレンはダッソーの鍛冶場に向かった、弾薬を受け取るためだ。弾薬を受け取ると言っても完成しているわけではなく装薬の充填は自分でやるのだが。
「ダッソーさん、こんにちは。今いいですか?」
「おぅローレン。できてるから持っていきな」
「ありがとうございます」
「あぁ、わりと疲れる作業なんだよなぁ、この後は酒でも飲みに行くかぁ」
「お疲れ様です、じゃあ後の作業があるので」
「おう、また明日の分も取りに来いよな」
ローレンはそのまますぐに自宅に帰るとすぐに作業を始める、装薬を天秤で正確に測り充填する。雷管もすでに大量にそろっており1時間ほどで30発分の弾薬を完成させる。
そして自分の部屋にある作業机でデッドボアの骨を加工する。デッドボアの骨で作るのはチークパッド、頬当てだ。
肩に構えてサイトを覗くときにストックに頬を当てているのだが、どうも高さが足りないようでちょうどよい高さに補うためのチークパッドを作ることにしたのだ。
ローレンは作業をしつつ、つい先ほどの言葉を思い出す。平凡かどうかは捉え方次第だと。
自分の前世の記憶には『自分』という人間がどういうモノだったのかが全くないためよくわからないが、おそらく深層心理では覚えていて平凡な生き方を嫌っているのではないか、そう思うのだ。




