第100話
わーきねんすべき100わめですよー
「オークの砦攻略」
リンジーの言葉を聞いて、新たに増援としてやってきた冒険者たちは体を硬直させる。
目の前に見えている砦がオークの住処だと知って驚き、その大きさからして相当数のオークがいることを理解したためだ。
「とにかく、向こう側へ行こう。作戦を改めて立案し直す必要があるな」
「えぇっと...」
「ともかく、話はあとで。ここにいたらオークに見つかるかもしれない」
ローレンは強引に話を切り上げ、ジャックが待っている反対側へと向かった。イヴァンたちも後戻りできないと悟ったのか、ローレンの後を追った。
「おぉ、シャリアートにイヴァンじゃねーか、お前らだったのか」
「ジャックさん、無事で何よりで」
「ああ、それよりも状況は?」
「それはまだだ」
リンジーが全員が集まったことを確認して状況の説明を開始する。
「...ってわけだ。質問は?」
リンジーは一通り説明を終えると、全員を見渡しながら質問がないか尋ねる。が、挙手する者はいなかったようだ。
「よし、じゃあ案がある者は?...あー、じゃあローレン任せる」
「えぇ?!俺かよ、まあ1つだけ案がある。オークの砦は木製、内側にある建物も見える限りでは土壁と枯草屋根。そしてセシリアがいる。もうわかるかな?」
「火攻めか」
「イヴァン正解。火攻めで混乱したオークを強襲。数が多ければ森の中へと散開して各個撃破する」
「他にいい案はないか?」
リンジーの言葉に反応するものはおらず、ローレンの作戦案が採用される。
後は夜を待つだけだった。
「うーん、私の火魔法で火を放つのはいいんだけど、ちゃんとあの木の壁が燃えるのかな?」
「それは問題ない。これを使う」
セシリアとオークの砦を偵察していたローレンは彼女の疑問にランプを取り出して答える。
「ランプオイルを木壁に塗って着火する。着火する箇所は4カ所、なるべく迅速にね」
「わかった」
秋の夕方はあっという間に日が落ち、辺りが暗闇に支配される。
やがて月明かりがオークの砦を薄気味悪く照らし始める。そしてそれとほぼ同時に、月明かりに照らし出されたオークの砦がいきなり明るくなる。
明るくなった原因は炎。壁の4方向から火の手があがる。ランプオイルによって燃え盛る炎に、ローレンが風魔法で全方向から風を送り始める。
オークたちが炎に気が付いた時には時すでに遅し。ローレンが送っていた風によって炎は本格的に壁を燃やし始め、内側の枯草屋根に飛び火し始める。
1つある出入り口から外へと出てきた1匹のオークは、外側から火を消そうと行動するが、銃声と共に倒れこむ。もう1匹、もう1匹と出てきてはローレンに狙撃されてはその生命活動を停止させていく。
火災に混乱しているオークは銃声を気にも留めていなかったが、仲間の死体を見つけて異変に気が付く。
そもそも火気のない砦に火が付く時点で異変なのだが、オークの知能では火を放たれたと気が付くのに時間を要したようだ。
仲間の死体を見つけたオークが仲間に伝えようと鳴き声を上げようとした瞬間、首に何かが巻き付き喉を締め上げる。声が出ない、そう思って首に手を当ててもがくが、呼吸も血の流れすら許さない圧迫によって意識を永遠に喪失する。
「よくやったシャリアート、腕をあげたな」
「ジャックさんにそう言ってもらえると嬉しいです」
声を上げることさえ許さず、鞭で絞殺したシャリアートは得意げに言葉を返す。
――――パァンッ―――――――
入り口から逐次出てくるオークをローレンは狙撃し続ける。既に5体ほどに風穴を開けて斃しているため、流石に異変を察知される。
「ブモォオオホォォォォオオオ!!」
オークの1匹がついに襲撃に気が付き、雄たけびをあげる。
それと同時に、オークの砦から10体ほどのオークが飛び出してくる。
ジャック、シャリアートが出口で待ち伏せ、勢いよく出てくるオークの足を狙って攻撃する。1匹はジャックの剣に足を分断され、バランスを崩し倒れる。頭を強く打ち付けているようで動き出すことはなかった。シャリアートはお得意の鞭で2匹のオークを転ばせ、さらに後ろから出てくるオークをも巻き込む。
2人はオークに気が付かれると分かれて遁走、森の中へと逃げ込んでいく。
むろん、頭に血が昇って怒り狂っているオークたちが罠だとわかるはずもなく、2手に別れて追撃する。
森に入ったオークはリンジーや剣を持った冒険者によって数を減らしていく。
やがて自分1人になったことに気が付いたオークは焦って砦へと戻ろうとするが、木の上で待ち伏せしていたローレンが真上からショットガンをぶっ放す。頭部を破壊されたオークはその場に血の池を形成し、鉄錆の臭いを放ち始める。
「これで出てきた奴らは最後だ。後は砦内にいる奴らだ」
ローレンたちは森を抜け、オークの砦へと戻る。未だに炎は燃え盛っていて、オークの砦が森を照らし続けている。
「中にいるオークはせいぜい多くて10匹程度。全員でいっきに突入してかき乱せ」
リンジーが指示を出し、全員が一気に駆け出していく。砦の中へと入ると、既に一部の壁は焼け崩れているようだった。壁の3割ほどが焼失している様子だ。
オーク達は今も消火活動を続けているようで、ひたすら土を火にかけているが、消火するよりも早く炎は広がり続けている。
ローレンはショットガンを構えて、消火活動をしているオーク達を後ろから襲う。
他の冒険者たちも容赦なくオークを襲い、斃していく。中には小さなオークもいたが、構わずぶっ殺していく。ここで慈悲などと言って見逃せば、いずれ人を喰う大きなオークとなって戻ってくるのだ。
やがて砦の中にはオークの死体が散乱するだけになり、オーク達の気配がなくなる。
「「終わったか」」
ローレンとイヴァンが同時に口走る。この言葉がフラグだということを2人は知っているはずだったが、それでもつい言葉に出てしまったのだろう。
2人の言葉に呼応するように、砦の最奥から通常のオークの2倍ほどのオークが現れる。
「クイーンオーク...」
それを見た誰かがぽつりと呟いた。




