第99話
ローレンたち3人に、男のものと思われる絶叫が聞こえてくる。その音量は異常で、森の中でそれなりの距離があるというのに、3人ははっきりと聞き取ることができた。
「ちっ、森の中で音が反響してて詳しい方向がわからない」
「とにかく、急ごう」
「わかった」
ローレンたちは声がしただいたいの方向へと走り出す。
森の中でライフルとショットガンを背負って走るのはなかなかに重労働であったが、ジャックとリンジーが先行して走りやすい経路を見つけてくれているため、なんとかついて行くことができる。
やがて、森が開けている場所へと出る。
伐採された切り株が大量にあり、その開けた中央部には木製の砦のような建造物がある。
砦というにはやや小さく貧相ではあるが、木を伐りそのまま立てて作ったと思われる木の壁は7~8メートルの高さになっている。
「これは...」
「予想以上だな」
「砦...?」
ローレンの砦という発言に苦笑いするジャックとリンジーの目は笑ってはいなかった。
「あれは、オークの巣。住処と言ったほうがいいかもな」
「ここまでデカいのは初めてだ」
「声がしたのはここから?」
「おそらくな」
3人は切り株に身を隠し、建造物を観察する。
外側の壁は木製で、出入り口は1カ所。門はなく、開け放たれている。だが、内側にオークの姿が見え、門を見張っているように思われる。
内側には、いくつかの土壁でできている小屋があり、屋根は枯草のようだ。
「どうする?いったん引くか?」
「他の冒険者たちは?」
「おそらくさっきの絶叫が...」
「ここでしばらく偵察して、だいたいのオークの数を数えよう。ある程度の数なら殲滅できるんじゃ?」
「確かに、もしかしたらまだ生存者がいる可能性も...」
ジャックは言いかけて口ごもる。食欲の権化であるオークが、大好物の人間を目の前にして我慢できるのだろうか。
「可能性はなくはない...かも」
「ともかく、夜まで偵察して、夜中に奇襲しよう」
3人はオークの砦が良く見える木の上に陣取り偵察しながら、夜襲の作戦立案を始める。
「ふーむ。多く見積もって30匹。最低でも15匹ってところか」
「内側が見えなくても、あの大きさの壁の中にいる数は多くても30ってところか」
「上位種がいる可能性は?」
「ほぼ100パーセントいるな」
「中に突入して戦うのは無謀だ」
「俺がライフルで壁の外までオークを誘導、各個撃破していくというのは?」
「そうだな、銃声を聞きつけたオークを森の中へと誘いこんで各個撃破するのが現実的か?」
「一斉に30匹出てこられると1人10匹を相手にしないとならないな」
「クソっ、人手が足りねえ。他の冒険者たちは全員オークにやられちまったのか?」
「姿は見えないな、生存者がいるとしたら逃げかえっている可能性が高い」
秋の森は茜色に染まった夕陽を浴びて、より一層鮮やかになって輝いている。風が吹くたびに葉が舞い、橙色の絨毯が舞い上がっている。
「もうすぐ日が落ちる。帰還するか、夜襲するか、決めるなら早いほうが...」
リンジーがオークの砦を観察しながら、決断を迫ってくるが、リンジーは何かを見つけて言葉を止める。
「砦の向こう側に冒険者がいるぞ、依頼を受けていた男たちじゃないみたいだ」
「行ってみよう。他の依頼で近くに来ていたのなら早く知らせてやらないと」
「ジャック、ここで見張りを続けてくれ。ローレンと俺が冒険者たちの方へと行ってくる」
「わかった、オークがそっちに気が付いたら大声で叫ぶからな」
ローレンとリンジーはカエデによく似た木から降り、森のふちを回って見えていた冒険者たちへと近付いていく。
冒険者たちの顔が見えてくると、ローレンはその面々に驚く。そこにいたのはイヴァン、シャリアート、セシリアだった。他にも剣を持った冒険者が1人、盾とメイスを持った冒険者が1人いた。
「イヴァン?」
「あ、ローレン!無事だったか」
「シャリアートも、セシリアもどうしてここに?」
「ギルドにいたらキザうざい剣士風の奴が飛び込んできて、『オークにみんな食われちまったー』なんて絶叫し始めてね、その男もボロボロだったからギルドもヤバいと思って増援を送ったってわけね」
「そうか...リンジーさんどうする?」
「あー、これだけの人数がいればやれるか?」
「やるってなにをですか?」
リンジーの言葉にイヴァンは疑問を投げ掛ける。その言葉がフラグだということに気が付かずに放った本人以外は嫌な予感を感じて言葉を発しなかったのだが...
「オークの砦攻略」




