ピエロ(道化役)
これは、本当の自分を隠した悲しいピエロ(道化役)のお話。
僕は、誉められるのが嫌だった。
だって目立つから。
テストで百点を取っても親に誉められないなら、どんなに悪い点数を取っても親に怒られないなら、結局バカのフリをした方がマシだと気付いてしまった。
だから誰も僕に注目しないように、でも目立たな過ぎるのも孤立して逆に注目してしまうから、適当に皆に紛れ込んでやり過ごしていたのに、中学校の新しい担任教師が「授業中に挙手して当てられた回数を張り出して記す」という地獄の様なシステムを導入した時は心底恨んだ。
挙手して指されるのが勤勉さの現れだとでも勘違いしていたんだろう。
そんな積極性などなくても、やろうと思えば勉強は出来る奴はいるという事に気付いていないのだ。
勘違いも甚だしい。
小学校の音楽の授業中、教師の決めた「課題曲」の指揮者と伴奏者を決める時、伴奏者はクラス内でピアノの弾ける女子が数人居たので割とすぐ決まったのだが、指揮者はいつもなかなか決まらなくて、結局いつも授業が終わってから「先生、僕指揮者やります」と申し出ていた。
音楽教師は「授業中に言ってよー」と笑ってくれたが、授業中の重い空気の中で発言するのが怖いのと、指揮者は練習の進行そのものを担う役割だったので、本当はやりたくなかった。
でも、誰かが指揮者をやらなければ授業そのものが進まないので、僕はいつも指揮者ばかりやっていて、あまり歌った記憶がない。
もしかすると僕が音痴なのはその代償かも知れないが、そうだとすれば何とも皮肉な話だ。
指揮者になりたくもない癖に統括者にならざるを得なかった、嘘吐きの代償。




