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プラケーター(慰め役)
これは、いつも母親の隣に寄り添っていた、小さなプラケーター(慰め役)のお話。
「離婚する」
それが、パパと喧嘩した後のママの口癖だった。
だから私はいつも「どうしたの?」と聞き返す。
どかどかと音を立てて階段を昇り、そのままの勢いで廊下をずんずん進んでノックもせずに私の部屋に入ると、バタンとドアを閉めてパパのあれが気に入らないだのパパは何も分かってないだのと喚き散らされるのも慣れた。
大抵の喧嘩の原因は、パパがママに理不尽な八つ当たりをしたか、機嫌の悪いママの地雷を踏んだかのどちらかだ。
普通に口喧嘩をしたら強いのはママの方なので、パパは金銭的な事を持ち出して「稼いでいる自分の方が上だ」という極論で逃げる。
特に暴力とかギャンブルだとかの問題は両親共無かったので、単純に考え方の不一致的な問題で言い争いが起きていた。
時々、ママは私に八つ当たりをする事もあったけど、私が味方をしないとママが独りぼっちになってしまうので、そういう時は私が我慢した。
暴言を吐かれても引っ叩かれても、私は我慢した。
だってママは悪くないと思っていたから。




