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ロストワン(いない子)

これは、まるで息を殺すようにして毎日をやり過ごそうとした、寂しいロストワン(いない子)の話。



私が部屋から出なくなるようになって、どれ位経っただろう。

もう何もかもが面倒で、食事すらしない日もあった。

私の部屋に鍵は付いていない。

勝手に入って来られるのが鬱陶しいので自力で鍵を付けようか迷ったけれど、そんな事をすれば父がキレて扉ごと外しかねないのは分かりきった事だったので諦めた。


私が完全に部屋に引き籠もっても、食事が部屋の前に置かれる事は無く、台所まで作り置きの冷え切った食事を摂りに行かなければならなかった。

一応、食事は作って置かれたが、それはいざという時に「作ったけど食べてくれなかった」という言い訳が出来ないと困るからだと思った。


母はキレると私を無視する人だった。

一度キレると大抵三日程度は口をきかないし、機嫌が悪い間はずっと、私は空気扱い。

その癖、機嫌が直ると、無視していたのが嘘だったのかと思う程、普通に接してくる。

正直に言ってしまうと、その豹変ぶりは気持ち悪かった。


ある時、いつもの様に母がキレて、私は部屋に籠もった。

丸三日、私は部屋から出ずに惰性で眠った。

もう機嫌直ったかな、と思って台所へ行き、作り置きの料理を食べていたら、突然母が台所へ来て「好き勝手するな!何様のつもりだ!出てけ!」と一方的にまくし立てた。

三日も絶食してた胃に突然普通食を流し込んだせいで腹痛を起こしたが、そんな事は心配されず、「同然でしょ」とあしらわれた。


母の機嫌一つで、私は空気になった。

そんな事に気付きもしない父に対して、私はいつも冷や冷やしていた。

うっかり地雷を踏んで、母と会話しなければならない状態を作る事が稀にあるからだ。

だから私は、母の機嫌が悪い時はなるべく部屋に籠もって顔を合わせない様にしていた。

「この家には子供なんていませんよ」とでも言わんばかりに。

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