ヒーロー(英雄)
これは、「兄弟がいない分、自分が頑張らなくちゃいけないんだ」と思い込んでいた、小さな英雄のお話。
気付けば、物心ついた頃から何でも完璧じゃないと気が済まなかった。
小学校のテストは百点が当たり前。
得意だった国語は、九十点代でも溜息を吐く程に気持ちが沈んだ。
行事のグループ分けでは、あえて副班長になり、班長の責任から逃れつつ、「副班長」という肩書きで裏から班のメンバーを仕切っていた。
それでも揉めたりしなかったのは、大抵班長になるのが単純な目立ちたがり屋で、班長としての仕事を真面目にやる奴がいなかったからだ。
だから、役に立たない班長に代わって、特に人望がある訳でもない副班長の自分が班をまとめて仕切っても誰も不満を言わなかったし、むしろ頼りにならない班長より頼りにされた。
音楽の授業では、合唱には加わらずに「指揮者」として伴奏者とクラスメートに指示を出していた。
指揮者は立候補制度だったが、「指揮者やりたい人は?」と教師が聞いても誰もやりたがらなかったので、空気を読んでそっと手を上げ、課題曲が変わっても毎回のように指揮者になっていた。
なので、音楽の授業で歌った記憶は殆どない。
でも、どんなに頑張っても、教師には誉められても、一番誉めて欲しかった親には誉められなかった。
同級生の母親に「しっかりしてるのねぇ」なんて言われても、学校から帰れば友達と遊ぶ時間もなく色んな習い事をして、テストも頑張って、成績だってそれなりの評価を貰って、それでも何をすれば親に誉めて貰えるのか分からなかった。
小さな「英雄」は、「自分の頑張りが足りないから誉めて貰えないんだ」と思い込んでいた。
自分が壊れた途端、辛うじて保っていた「家庭」と呼べる集団は呆気なく崩壊し、些細な事で異常なほど親に責められるようになって気がついた。
「最初から、この人達は自分を誉める気なんてなかったんだ」と。




