落ちる聖女
初投稿。温かい目で読んでほしい。な。
夢を見たことはある。流行りの異世界とやらに自分が行けたら。今と違う生活が送れたら。魔法が使えるようになったら。学校に行かなくていいし、聖女認定されたら楽しいんじゃないかって。霧崎汐音っていう完全な和名だけど、妄想の中ならなんとでもなる。
でも、現実はそう甘いだけじゃないらしい。
「んあ……」
あれ、ここは?私はさっきまで学校にいて、遅刻しそうになったからあわてて階段を昇ってたはず…で、足滑らせて落ちたんだっけ。
意識がはっきりしてきたのであたりを見回けど、一面真っ暗で何も見えなかった。
「あれ、目は開いてる…よね…」
どこ、ここ。怖い。とりあえず歩いてみよう。
そうして一歩踏み出した途端、今まであった地面がなくなって、落ちた。
「え、あ、きゃああああああああああああああああああああああああ!」
待って、待って、ナニコレ!ここはどこなのお!
落ちてるよおおおおお!
咽が枯れるのも承知でひたすら叫んでいたら、目の前がフッと明るくなった。
明るく?違う。大きな光が目の前にあるんだ。
『KiりさkI、いぉんえ』
「いたっ」
頭の中に流れ込んできた。テレパシー?念話?
「ねえ!あなたが誰とかわかんないけど!この落ちてるの止めてよ!」
光が人の形を作り始めたのを見てとっさに叫んだ。
「死にたくないんだってば!いつまで落ちるの!!!!って…え……きれい…」
光は1人の美女の形になった。サークレットを付け、目はガラスのような白で、全体が光り輝いていて髪も肌も、元の色がわからない。とにかく、生物じゃない感じ。
これはまるで、美と権威を詰め込んだかのような―――
その麗しい唇を開き、言葉が出てくるのを察してゴクリとする。
「AAAAAAAAAAAA」
『悪ヲ 退ヶロ』
―っつ。甲高い叫びのような音と同時に脳内にまた声が聞こえてきた。
「悪!?なにそれ!それより落ちてるんだけど!一体ここ何メートルあるのよ!」
『huせ、フse、ふセ』
「何その呪文!」
謎の言葉を最後に光は消えた。ああ、このままならどこに落ちても死ぬんだろうなあ…
死ぬ前に貴重な体験ができたや。
グッバイ私。
そう思って目を閉じた。
バッチャアアアアアアアアアアアン!!!!!
「うきゃあ!」
「えっ」
ちょ、水、溺れる!誰か助けて!ってあれ…
「足がついた」
あれ何で?私、落ちて死んだはずじゃ…こんな浅いところに落ちたら即死じゃないの?
というかここはどこだろう…水…池?
よく見ると、噴水のようなところに私は立っていた。
「死んでないんだ…へくしっ」
くしゃみがでちゃった。制服がびしょ濡れだ。乾かさないと。
「混乱しているところ悪いんだけどさ、君、誰?」
目の前に金髪の美丈夫がいた。外人?モウ、ナンナノ。
にこにこしている彼を見ていると頭がパンクしたようで、目の前が真っ暗になっていった。
恋愛要素は中盤から。