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家路  作者: ちかげ
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第一章

時々、変なモノが見えた。それは普通の人には見えないモノで、とにかく、異質なモノだった。見えてはいけないモノ。気づいてはいけないモノ。だけど、小さな頃はそれが当たり前に見えるモノだと思っていた。みんな見えていると。そう思っていたせいで小さい頃、随分辛い思いをした。だけど、今は違う。もう、あんなヘマはしない。私は普通だ。大丈夫。

そう言い聞かせて家を出る。時刻は七時半。今から家を出ればちょうど8時過ぎに学校に着くだろう。早すぎず、遅すぎない時間だ。目立たないことをもっとうに生きていた私にとって、いかにさりげなく人の輪に馴染むかが重要だった。制服のスカートだって、長すぎず短すぎずとにかく普通を目指し、持ち物もハデすぎす地味すぎ無いものをチョイスした。少し気にしすぎかもしれないと自分でも思うけど、過去の失敗から学んだことである。とにかく、普通でいなければならない。

ましてや、今日は高校の入学式である。絶対に失敗できない。人は第一印象で決まると本にも書いてあったし、やり過ぎて損はないハズ。私はスマホに表示した地図を頼りに高校を目指した。

この当たりは畑と閑静な住宅街が広がっていて、最近引っ越してきたイオリにとっては、バス通りに出るのも一苦労だった。たぶん、地図アプリがなければ迷っていたに違いない。

ここを曲がれば近道だという所でイオリは足を止めた。何か本能的にその道に行ってはいけない気がしたのだ。恐る恐る曲がり角を覗きこむとソレは居た。黒くて濃い影のようなモノ。ソレが道の真ん中に立っていたのだ。ソレはユラユラと動き始めた。イオリはすぐさま曲がるのを止め、別のルートを探した。

久々に見たためか変な汗ドット溢れてきた。いくつになっても見慣れない。ソレが何であるかはわからなかった。ただ、世間的に言われる霊というモノなのだろう。しかし、イオリは頭からそのことを押し出す。いけない。いけない。普通にしなきゃ。イオリは再び歩き出した。地図アプリではしきりにさっきの道を通るよう促されたが、全て無視をした。そして、予定時刻より少し遅れたが無事イオリは高校へ到着することができた。

ほどなくして、その道がこの界隈で有名な心霊スポットであることを知った。しかし、イオリは一切行かなかった。どんなにクラスの友人に誘われてもだ。イオリは身にもって知っていた。ソレにこの世の断りは通じないこと、関わらない方がよいこと、そして、ソレの存在に自分が気づいていることを悟らせてはいけないことを。

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