序 『死からの逃走』
たーむ、と申します。初めまして皆さん<(_ _)>
そして『ワールド オブ レインボウ(以下”ワルレ”)』を読んでいて下さる方は久しぶりでございます(二か月ぶりですね……)
”ワルレ”の展開に詰まり……以前、といっても二年前初めて書いて放置した小説を、ふと書き直そうと思ったのがこの小説を書こうと思ったきっかけなんですが、紆余曲折の果てに全く別物になりました。笑
まったく新しいシリーズとしてお楽しみいただければ幸いで御座います。
追記;書ききれなかった設定や情報を後書きで書いていこうかと思います。後書きで突然物語が始まってもびっくりしないでください笑
「(ここには誰も助けに来ない……もう……限界だ……)」
廃墟に苦し気な呼吸が吸い込まれてゆく。
朽ち果てて天井が落ち、満点の星の天蓋の下。コンクリートが剝き出しになった床を4人の同じような服装の軽装の少年たちが走り抜けた。
先頭を駆ける二人の大きな少年の後ろを十歩ほど遅れてまだ幼さの残る双子の兄弟が続く。
おそろいの綿でできた無地の薄い半袖シャツに、麻の上着。靴は随分履き古されて汚れてはいるが丈夫な革で出来ている。あちこち修理した後が目立つリュックを背負う彼らの姿は、まるで小さな探検隊のようだった。
そしてそれは、古代の遺跡に仕組まれた罠に追われている不運な探検隊だ……。
彼らはやっとのことで走っているという状況だった。その足並みはバラバラで、やっとのことで走っているという状態に近い。とくに後ろを走る二人は明らかに限界を迎え、スピードが落ちている。
「ユウ兄……ソウタとヨウタが限界だ……休まない、と……」
「ッ!!(なんで……なんでこんな事にッ……!)」
後ろを走る少年の苦し気な言葉に、先頭を走る年長の少年は唇を血がにじむほど強く噛んだ……。
ユウ兄と呼ばれた彼の名前は篠崎雄心。この近くの村のガキ大将だ。
黒髪黒目で背は169cm。顔立ちにも特に特徴は無い普通の少年だ。腕っぷしが特に強いでも頭がいいでもない彼がガキ大将をしているのは、村の子供の中で最年長で18歳であり、面白い遊びを思い付くのが得意だからだ。18歳の割りには小柄だし髭も生えていない……まだ大人になり切っていない少年だった。
月明りに照らされ半分以上陰になった彼の顔は酸欠と、後悔に歪んでいた。
――少年達は追われていた。
人の姿をした化け物が執拗に追って来る。その理由は彼らの言動から明らかだった。
「(捕まったら……喰われる!!)」
「さぁあ! 出て来いよぉおお!! 今ならいたくしねぇえよぉおお!!?」
「い、今ならすっっきり殺してやるぜぇぇえ!!?」
「今なら美味しく食ってやるからよぉおおお!! ……あ、出て来なくても、後で美味しく食ってやるけどよ! ヒャッハーッ!!」
今は地の利がこっちについてる。オレ達4人の足音はこの大きな建物の中で反響し合い、追手の足音と混じって、奴らに正確な位置を教えない。
それに、天井から降って来た大きな瓦礫を避けるてジグザグに走るのも、日頃から山遊びで鍛えていたオレ達には苦にならない。
苦に…‥ならなかった、少しまでは。
全力で走り続けるにはもう体力の限界だった。
「……ッ!」
足元の小石につまずいてまた呼吸のペースを乱し、喘ぐように空気をむさぼる。
体力以前に、『追われる』という状況が、遊びではない鬼ごっこの恐怖が、そして……逃げきれないと分かっている絶望が……少年たちの気力と体力を奪っていく……。
「ガキが俺達から逃げられると思ってんのかぁああ!?」
「お、美味しく料理してやるからよぉおお!」
「ヒャッハーー!!」
「サブロー! お前さっきからうるせぇ!!」
追って来る化け物達の笑い声や奇妙な叫び声があちこちから聞こえてくる。
「(どうしよう……どうする、オレ!?)」
当然のように発せられる『食ってやる』という言葉に、みんなの呼吸が浅くなり、さらに乱れ始める。
……まるで娯楽で狩りをするように、奴らは俺達を追い詰めて、逃げる様を愉しんでいるようだった。そして、捕まれば殺されて食べられてしまう。
くそっ! だからっ! 最年長のオレがどうにかしてみんなを逃がさなきゃいけないんだろッ!この状況をどうにか……しなきゃいけない……んだろ……。
――出来るわけがない。
一瞬頭をよぎる諦め。
オレは理性を吹っ飛ばして、思いっ切り叫びたい衝動に駆られた。
頭を占めるのは後悔と共に徐々に大きくなる諦めの念。
――なんで! どうしてこうなったっていうんだッ! いったい何が悪かったんだ!!?
オレ達はいつもみたいに遊んでいただけだったのに……それが一体なんで…… 何でこんな事になってしまったんだっ!!
30,31日、そして来年の1,2,3と連続で投稿させていただきます。どうぞよしなに~m(__)m