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小説.49

俺はまだ裸。男の身体。元の俺の身体より背が高い。視野、視界の違和感はある。重さは感じない。アルコールを浴びまくる。タオルをぞんざいに使い血と酒を拭き取る。


志織は似合わない赤いドレスを着た。ブカブカだが仕方ない。スカートを切り短くする。裾をまくる。

食事。棚を漁る。ナッツ類とチョコレート。志織は食べ始める。机の上に電池式のキャンドル。全て点ける。

タキシードみたいなスーツを見つける。俺は着る。

赤いドレス姿の少女と白い肌の男のスーツ姿。何の笑い話だ?笑えない。


外に出てみる。病院からかなり離れていた。

遠くで薄ら明るい場所。おそらくあそこが病院だと思う。まだ火があがってる。

バイクを取りに行く。あれは俺のだ。俺と志織のだ。

何日経った?と聞く。二週間位。と志織。


病院はどれ位燃えたのか?バイクは無くなってると覚悟した。


あの医者達は?の答えに志織は、分からないと、答える。


頭がカッと熱くなる。怒りが満ちる。許せない。志織をこんな目に合わせた。


志織は、怖いと言った。また我に返る。

俺らしくもない、怒りの感情に溺れてる。こんなに頭にきた事は一度もなかった。スナックの看板を蹴りたくなる。今まで八つ当たりをした記憶がない。なんとか我慢する。自制する。やるべき事はなんだ?


これ程の怒り。俺が俺でないみたいと思った瞬間、ゾッとした恐怖を感じた。

もはや、身体は俺のモノではない。なら俺である証は、心や感情。思考だけだ。

こんな怒りは俺ではないはず。


人類の為に?クソくらえだ。心の声。


ちょっと待て。この気持ちは俺の気持ちか?本当に俺が思ったのか?


[ヒロ?]志織の声で自分だけの世界が消えた。

[本当にごめん。次に呆けてたり、何かに集中してたら声かけてくれる?]

俺は言った。志織はうなづく。


怒って当然だと思う。でもそこで怒ったら負けだと思ってる。復讐して何になる?そんなプライドはなかったはず。

そんな状況になった自分の愚かさを反省すべき。次から気をつけるべき。一時の感情に囚われるのは恥ずべき事。


そう。この考え方が俺だ。だが、だが、許せない気持ちがまだ強い。


[ヒロ?]志織の声。

そうだ。志織を怖がらせてはいけない。安心させなければ。やるべき事を考えろ。俺の感情は二の次だ。


やっと落ち着いた。そうだ。怒りに身を任せて何になる?志織を困らせるだけだ。


[バイクは無いと思うが、見に行こう。そして実家に行こう]

俺は言った。志織はうなづいた。


怒りよりも優先すべき事を考える。まずは志織の服。靴も無い。志織の靴。俺の靴。ヘルメット。食料。もう一度身体を洗う。テント。シェラフ。志織の睡眠。


なんだ、やるべき事はたくさんあるじゃないか。怒りに振り回されてる場合ではない。


本当にそうか?

もう一つの心の声。無視する。


家探しをしながら病院に向かった。

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ゾンビサバイバル.番外編も書いてます。
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