小説.48
気が付いたら俺は何かを喰べていた。
タイムスリップしたのか?と思った。
目を開ける。眩しい感覚を目に受けた。久しぶりに眩しいと感じた。気のせいだった。目の前にはゾンビの腕。俺が掴んでいた。顔から血がしたたっている。顔を上げた。
目の前に血まみれの志織が立っていた。
[お、俺は]
口がもどかしかった。立ち上がる。よろける。俺は男の身体だった。
ナゼ?どうして?
思い出す。確か医者に頭を切られたような…。
ここはどこだ?
志織が説明した。ガソリンを撒いて火をつけて、頭だけになってる俺を奪い逃げた。と。そして、ゾンビを倒して口の中にゾンビの肉を入れたのだと。
志織はすごくやつれていた。汚れていた。御飯をまともに食べてないようだった。俺は物凄く申し訳なかった。
ごめん。本当にごめん。何度も謝った。
ありがとうでいいよ。
と、うっすら笑って言った。その気遣いと労わりに俺は震える。
ありがとうでは済まない。済まされない。俺は志織に何度助けて貰ったのか。守ってやると言いながら。
もっと強くなりたい。もっと賢くなりたい。志織にこんな危ない目にはあわせたくない。
多分、凄い匂いだと思う。まずは志織を綺麗にし、それから栄養のある食事と睡眠。俺の事は全て後回しだ。
ここはどこだ?バイクは?医者は?病院は?
頭か破裂しそうな位、疑問が浮かびあがる。
まずやるべき事は?
清潔にする事。これが原因で病気になったり…もしも、万が一死んだりしたら。怒りが充満する。俺は首を振る。やるべき事は?
ここは、どこかの住宅の部屋だった。
水はあるのか?と聞いた。志織は無いと答えた。
外は暗かった。ここから病院の建物は見えない。
店屋のミネラルウォーターは無いだろう。
道路向こうに地下にあるスナックを見つける。アルコールなら。走り出す。地下に降りドアノブを引っこ抜いた。何本かの指が折れたがかまわなかった。
中に人は居ない。発光は見当たらない。
冷蔵庫は空だったが戸棚やカウンターの棚にはウィスキーや焼酎はあった。
志織を呼びに戻る。志織に片っ端からアルコールをかけさせる。
俺がやりたいが、俺は血まみれだ。
志織は臭いと言ったが、血の匂いよりかは酒臭い方がマシだろう。
服が必要だ。従業員室を蹴り開ける。
たくさんのおしぼりのカゴ。ドレスが数着。
志織にそれを言った。
裏には割り込み用の炭酸水。そしてミネラルウォーターがあった。
志織に伝える。
誰かが階段を降りて来る足音。俺はビンを階段めがけて投げつける。人間だろうがゾンビだろうがかまわずに。
志織はビックリする。俺は謝る。
苛立っている事に気付く。
冷静になれ。もっと考えろ。二度と過ちは犯すな。思い切り息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
慌てても、イラついても仕方ない。俺は生きてる。志織も無事でいる。他に何を望む?今は生きて志織が無事な事に目を向けろ。
また一からやり直せばいい事じゃないか。
自分に言い聞かす。




