小説.47
[もちろん血液でもゾンビ化になるがの]
ゾンビには何本かの管が刺してあり、それぞれのベッドにモニターの機械。
[心臓はなくてもゾンビは動く。血流で生きてるか判断出来るのじゃ。血流といっても、血管には血液は通っとらん。だから白いのじゃ。骨の中に血液が流れておるのじゃ]
[麻酔も毒もアルコールも効果はない。すぐに排出される。焼いても、酸をかけても、タンパク質を摂取すれば細胞は作られてく。さて、次の部屋に行こう]
[ワシはな、どうしても不死の身体になりたいんじゃ。君みたいにな]
次の部屋にはゾンビはいなく、たくさんのバッテリーが積まれている。先生は革手袋をはめながら言った。
[さて、ゾンビをどうやってここまで連れて来れたか分かるか?どうやって掴まれずに実験台に出来たか?答えは簡単じゃよ。こんな風にやったんじゃ]
先生は二本の棒を俺に刺した。途端、俺は全身が硬直し、身体が動かなくなり倒れた。
志織が俺にしがみつこうとする。部屋に複数の医者が来て志織を羽交い締めにする。志織の叫び声が消える。
[電流を流すと筋肉が硬直するのじゃ。すぐには治らん。君には悪いが、殺しはせん。どうせ死なないしな。少しだけ脳みそをもらうだけじゃて]
老人はしゃがみ込んで、俺にだけ聞こえるように言った。
[これは人類にとって大きな進歩なんじゃよ。不老不死の力を手に入れられる。君はもう人間じゃない。ゾンビなんだ。ワシは違う。不老不死の人間になるんじゃ]
担架に乗せられる。意識はあるのに身体が動かない。志織の姿も見えない。目隠しをされる。
老人は言った。細かくされても生きてる。と。だがどうやって復活するというのか?それよりも、志織が心配だ。守るべきなのに。志織に悲鳴をあげさせてしまった。それが悔しくて頭がおかしくなりそうだ。指すら動かない。せめて話だけでも出来れば。舌に意識を集中する。
手術部屋。服を脱がされる。手足を縛られる。手術台。ライトの明かり。老人が手術服に着替えていた。
俺の目を覗いて言った。
[麻酔は必要ないよな]
俺の舌はピクリとしない。
電動刃物。手足を切られた。痛みは無いが、切られてく感触は分かる。血液を吸われてる。思考がダルくなるのが分かる。目を開けてるのすら億劫になる。俺の舌は動かない。
[さて、これで暴れても大丈夫じゃ]
老人の言葉。髪の毛を電気バリカンで切られる。耳の上に穴を開けられる。ドリルの機械音が俺の全てになる感覚に陥る。濁流が流れる地下水の中にいるようだった。その濁流の中で俺は流されている感覚。
[頭蓋骨切開]
誰かの声が響く。いつの間にか濁流から暗闇の洞窟の中にいる感覚。数字が浮かび上がる。漢字が浮かび上がる。火事だと言う声。洞窟の中でその言葉が響き渡りこだまする。洞窟全体がグルグルと回り出す。箱の中に入れられて転がされてる感覚。上下左右どこにいるのか分からない。突然放り出され、宙に浮いた感覚。そこで俺の意識は無くなった。




