小説.41
人間やゾンビが通った形跡のない草が伸び放題な小道。バイクがギリギリ通る舗装されてない道路。横から伸びた草が俺の右腕に当たる。志織には毛布をかぶせた。
太い枝木に注意し、道だった道を進む。
葛◯沼という立て札。近くに川もあるだろう。
崩れかかった小屋。やはり雑草が伸びて誰も来てない事が分かる。
小屋の後ろに小さな川。俺は穴を掘る。
身体一人分は浸かれる大きさの穴。濁った水はすぐに流れ、綺麗な水が溜まる。冷たいだろうが身体は洗える。先に志織を入れさす。バイクのガソリンタンクがまだ冷えないうちに。
身体を洗ったらガソリンタンクで暖めればいいはずだ。志織はタオルをタンクにかけてから脱いで川に入る。
冷たいはずなのに文句も言わない。
志織の御飯はカップ麺とレトルト御飯。温かい食事。俺は焚き火をし、お湯を沸かす。
水の音、鳥の声、虫の声、草木が風で立てる音。トンボ、 羽虫、アリ。
ゾンビが見えない景色は、前の世界にいる気持ちになれる。
前の世界なら、こんなトコに来ない。行こうとも思わない。何が楽しいのか?ゲームセンターや映画館の方が楽しい。
でも今は、この空気や雰囲気が落ち着く。なんだろうか、この気持ちは。
答えを出そうと考える最中に志織があがってきた。新品の服と靴。バイクにまたがりタンクに抱きついた。やはり冷たかったのだろう。
志織のカップ麺をすする音を聞きながら俺も川で身体を綺麗にする。
冷たくも熱くも感じない。合理的だと思うしかない。
左胸をこそぎ落とす。まだ大丈夫なのだが、落とせる時に落としとく。
この水を飲むとゾンビになるのだろうか?
もしそうなら俺の存在もゾンビを増やす原因なのかもしれない。
この水は街へ流れ、やがて海に。
船の人達は人間だった。
どれ位体内に入るとゾンビになるのだろうか。
噛まれたらゾンビになるのは分かる。
感染は唾液からなのか?
夕暮れまでここで過ごす。
志織はまたバイクにまたがっていた。
温かいのか?それともバイクが気に入ったのか。
聞こうと思ったが、このまま少しでも寝てくれたら体力回復にいいか。と俺は黙ったままにする。




