小説.40
ゾンビが近付いてきたので再び移動。十五分ももたなかった。車が塞がって通れない道。元の道を引き返す。
道の真ん中を通るがゾンビがいる。急いで降りてゾンビを田んぼに押して乗る。志織にも運転をさせてみようかと思った。
広い道に出て、志織と交代。ギアの踏み方を教える。三回ほどエンストしただけであとは走れるようになった。吹かし気味だが、それもすぐ慣れるだろう。
[楽しい?]と聞いた。志織はうなづく。
サイドカーだから倒れる心配はほとんどない。
ずっと隣で座ってるのも退屈だったのだろう。早く気付いてあげればよかった。
退屈とか、乗りたいとか、そういう欲というか要求を志織は言わない。
だから、出来る限り俺が気付いてあげたい。ごめんな。と心の中で謝った。
[疲れたら代わるよ。好きなだけ乗って]
俺は言った。
けっこうな時間、志織は運転していた。同じ道は走らず、病院からもあまり離れてない。偶然なのか、考えて走ってるのか?考えて走ってるとは思えない。初めての運転。しかもマニュアル。そんな余裕はないはずだ。走らすだけで精一杯なはず。
けっこう走っているので、ここら辺りにいる人間にはバレてしまってる。
それでも志織の走ってるのを止める気にはなれなかった。
本来なら止めるべきなのだが。滅多にない志織の意欲的な行動だったから。
飽きるまで乗っていて欲しかった。
ガソリンの心配も無しにした。まだ予備タンクは満タン。俺はバイクの方のタンクが空になる前に毎回入れていた。
どこにバイクを隠せばいいか。山の中か、どこかの車庫や壁のある家か。
結局、山の中に隠す事に。身体を洗いたいせいもある。適当な民家に入り、タオルやシーツを取り、山の方へ向かう。




