小説.39
病院内に入る場所が見当たらない。志織は懐中電灯を点けて二階から五階までの窓に当てていく。が誰も窓を開けない。気付いてないか、気付いても顔を出さないか。
ゾンビが近寄って来る。仕方ないのでバイクを走らせる。反対側もバイクに乗りながら懐中電灯の明かりを各窓に当てて行くが、反応は無い。
静かなのでバイクの音が響く。だから少しは反応があってもいいとは思うのだが。
実家にはまだまだ時間がかかる。帰りにすべきか悩む。志織は何も言わない。
大型パチンコ屋の立体駐車場の中に入る。最上階で休もうかと。車をバリケードにすれば大丈夫そうとの判断から。
ほとんどの車のトランクや、ボンネットが開いている。ボンネットの中のバッテリーが外されてる。自作の照明器具に取り付けるのだろう。
ゾンビは居ない。居ないという事は、ここには人間も居ないという事。
最上階の駐車場。ゾンビが片方側に十数体居た。隣の屋上にキャンプ用のテントが三つ見えた。ここから板かハシゴでもかけて隣の屋上へ出入りしてるみたいだ。人間が居たので仕方なく俺達は別の場所に移動する。
柵がなければあのゾンビはビルとビルのに落ちるのではないか?あそこはコンクリートの壁なので無理。
屋上なら出入り口を隣接しているビルなどから渡るようにすれば、下からは見えないし、ハシゴや柵さえあれば陸の孤島になる。
住み家作りにはいいアイデアだ。
バイクでウロウロするのも厳しい。
ガソリンももったいない。それに屋上に人間が居る確率が高い。見られてる可能性がある。チャンスとあらばバイクを奪おうとする可能性もある。
どこか休める場所がないか探す。これといった場所がなく、町から少し離れて田畑の広い場所の真ん中辺りに止める。近付いて来たら逃げる時間はある。一時しのぎにしか過ぎないが。
二人だけならマンションや広い家屋のどこかに潜めるのだが、バイクを隠す場所も。となると難しくなる。
あまりバイクから離れたくない。食料や生活必需品有りのバイク。誰だって欲しがる。
夜に病院に行き、また懐中電灯の明かりを窓にあてよう。もしくは二階に上がる場所を見つけて入るか。
でもあれだけ壁に車を立てかけ塞いであるのだから、コッソリ入ると下手したら殺される。少なくとも、敵とみなされる。
やはりなんとかして誰かに気付いてもらい、話をするしかない。手紙を渡すだけなのだ。
手紙を見せてもらう。十数枚の封筒。名前は、石崎、石川、石守、石村。石塚…と名前は全てバラバラ。多分、石なんとかサンなのだろう。一通の封筒に、全ての名前を書けば済むはずなのに。
パルキッツァらしいといえば、らしい。
それともこれには何かの意味があるのかも知れない。




