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小説.32

朝ご飯。男は、やけに時間をかけて缶詰を物色する。量が微妙に違うとの事。納得いった顔をしてやっと缶詰を渡される。

[これはこの子の分。こっちはお前の分]

どれも種類の違う缶詰。

ワケを聞くと、中身の栄養が違うらしい。

[健康が大事だからな。最後まで食べろよ]

俺は仕方なく口の中に入れる。男は食べずに俺達を見て満足そうに笑ってる。

会話のない食事。男は空になった缶詰を窓から次々と森の方へ遠くに放る。

森の方の窓の下はゾンビの腐敗物が積まれてる。

[臭い所に腐るものをだ]

男は言う。それから、よし、俺にくれる玩具を出せ。と言われ、出す。

男は気に入ったみたいで、少しいじるとハンカチに包みポケットに入れた。


[あのオモチャはな、タイヤが不十分なんだ。もう少し先の所に農◯がある。そこにある農機具からタイヤを持って来なきゃならん。どうする?]

あのままで充分だと思うが、断れそうな雰囲気ではない。

[取りに行くぞ]と俺達の返事を待たず男は言った。

[今からですか?]俺は思わず言った。

[アホか。胃袋に入るだけだろうが]

男の言葉に志織は笑う。


[夜までにやる事をやろう。お前らも手伝え]

志織は食料の数を数えてノートに書くよう言われる。取り出した分を引けばいいのだが、男いわく、間違ってたらどうする?と。

足した方が確実らしい。きっと毎日数えてるのだろう。


男と俺は下に降りて、男はバイクのネジを外しにかかる。俺は、壁にかかってる工具を綺麗にするよう言われる。

[時間ないからな]男は楽しそうに次々と分解していく。

毎日、缶詰を数え、工具を掃除し、多分、タオルや弾の数も数え、壁を拭いてるのだろう。もしそうなら時間はいくらあっても足りない。

男は色々な事を話し続ける。

志織が、数え終わった。と降りて来た。男は、もう一度数え間違いがないか数えろと言った。俺と志織は男に気づかれないように小さく笑いあった。


車が道路を横切る音。俺は上の空でドライバーを拭き、男の話を聞き、外の気配を気にしてた。今までに三台は通った。

ガソリンがなくなるか、通れなくなるまでバイクでの移動がいいと思うようになった。

男は全ての部品をバラした。タイヤを交換するだけなのに。とも思うが男のやる事に口は出さなかった。


それから男は机に向かうと書き始めた。俺は質問したが、シッと言ったまま図面を引き始めた。志織が降りて来たので、俺は志織に静かにするよう、口に人差し指を当てた。


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ゾンビサバイバル.番外編も書いてます。
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