現実.28
書いてネガティブな気持ちになり、携帯電話から目を逸らす。辺りは真っ暗闇。見慣れた光景。外から見たら俺は暗闇と同化しているだろう。
この時間を俺は気に入っている。俺も自然の一部なんだと思えるし、俺も自然の一部でいいんだ。とも思えるからだ。
ゾンビは人間世界ではジャマな存在。つまり俺は否定されている存在である。でも自然は必要だからゾンビも俺も生かしてるはず。そう思える。
携帯電話の小さな明かりが人間社会との繋がり。この位の繋がりが俺には心地良くなってる。
人間との関係は志織だけで充分だ。
生殖反応は無いから、生きた証が欲しい。記憶ではなく目に見えるナニか。つまり記録で。そんな理由もあり小説を書いている。
俺の弱さを小説に書いた。書いてしまった。
小説だから別に書かなくてもよかった。でも知って欲しかった。誰かに。志織に。読んでくれるだろう人に。
自叙伝は書きたくなかった。あくまで架空の人物として自分を書きたかった。
ゾンビの身体に人間の思考。他に居るのだろうか?
あの頃よりかははるかに強くなった。でもそれは志織も同じ。他に生き延びた人間も同じ事。
やるべき事。小説を書き終える。少なくとも今に至るまでの事は書きたい。
時間だけはたくさんある。
ネガティブを現実に持ち込まないように意識し、また小説を書き始める。




