小説.26
志織が寝入ったのに気付く。目は半分開けたまま。
まだ夕方。だが火事のせいで普段より薄ら明るい。
真っ暗になればゾンビや人間の発光が分かりやすくなるので、見やすくなる。
真下のゾンビは思ってたよりも少ない。
火のあがる方へ向かってるのだろうか？あそこにはたくさんの死体と動けなくなったゾンビがいる。
ゾンビがそろそろ喰べるのを辞める時間。人間の活動時間。
反対側の方は暗い。望遠鏡を覗くと発光は消えて見えなくなる。裸眼で見る。まだ明るいが、かすかに発光してるのが分かる。
レンズ越しだと発光は見えなくなるのは少し不便だと思う。
一晩中、街を眺める。ゾンビと人間の行動は違うからすぐ分かる。
火事の方は明るくて分からないのだが、マンションやアパート。スーパー。どの階にもゾンビが居る事が分かった。
ビルの屋上にもゾンビが居る。
ゾンビが登ったのか、感染した人間が登ってゾンビになったのか。
地下鉄の入り口からゾンビが出て来る。
人間が隠れながら移動してるのが分かる。ほとんどが単独か二人。
目をつぶってから目を開けた時に発光がよく分かる。先に発光体が見えてから他の景色が見え始めるのだ。
コツがいるが、そんな見方を繰り返す。
この見方だとパッと見、どこに多くのゾンビが居るかどうかが分かりやすい。
分からない事だらけだが少しずつ分かってきている。本当に少しずつ。
空はオーロラ。地上は火事。火事以外の所は真っ暗闇。俺には灰色がかって見える。
普通の人ならこの光景はおぞましく恐ろしく見えるだろう。
たまに遠くから車のライトが見えた。町から外れたら車の移動も可能なのだろうか？
地図も必要だな。頭に入れる。
どうやって、女の身体になったのだろうか？
ゾンビの身体を乗っ取れるのか？魂が乗り変われるのか？人間に乗り変わるのは可能なのか？
次から次へと疑問だけが浮かぶ。
朝まで時間はたっぷりある。
たまに望遠鏡でも覗きながら、色々と考える。
やるべき事以上に考えなければならない事がある。
食べ物の味には興味がなくなった。
以前友達から乗馬をやらないか。と誘われた事があった。全く興味も食指も動かず断った。それと同じくらい味覚に興味がない。
今なら乗馬をやっとけばよかったと思う。馬ならかなり移動が出来るだろう。乗りこなせればの話だが。
