小説.25
高架線の下。小さな声で呼ぶと志織が顔を出した。俺は登る。
リュックから品物を取り出す。
鏡は、反射で俺に知らせる為に使うらしい。俺の顔に鏡の反射で光を当てながら志織は言った。
なるほど、これなら離れていても気付ける。
志織は服を着替える。身体を洗いたいだろうと思う。けっこう汚れてる。
トイレットペーパーを見つけ[お姉ちゃんが居ない時にするわ]と笑って言った。
一瞬、お姉ちゃんって?と思ったが、俺が女なのに気付く。そう言えば、めったに名前で呼ばれた事はない。俺もあまり志織と名前で呼ばない。
あとは雨の心配。確か火事になると上昇気流だかで雨が降りやすいと何かで知った事がある。
テントが必要。今頃気付く。頭に入れる。
志織はずっと望遠鏡を眺めてたそうだ。
二、三十人位は見つけた。と言う。
実際、何人が生き残ってるのだろうか?
かなりの人間が居るはずだ。ただその人数をまとめる警察や機関が全く機能してない。
志織でさえ他の人間には疑心暗鬼になってるのだから、まとめるのには個人の力では不可能だ。
国や警察は何をしてるのだろう。
生き残ってるはずだとは思うのだが。
食料はたくさんある。と志織に言い、出来る限りたくさん食べるように言った。
缶詰とお菓子しかないが。
簡易コンロや鍋も必要だ。
俺が食べないせいで思いつかなかった。
火事は静まる様子もない。火の手は広がっている。これだけコンクリートの街なのに。と思うが、家屋以上に車やバイクが多いからだと思う。爆発音はあの時以来、聞かない。車は滅多に爆発しないのだろうか?
タンクローリー。ガソリンスタンドを探す。近くには見当たらない。
志織は望遠鏡を眺めるのに飽きたのか本を読み始める。
寝袋に入って読んで。俺の言葉に素直に従う。
俺は望遠鏡で街の様子を覗く。
川と橋はすぐそこだ。三十分かからないだろう。
人がいる。五、六人が固まって行動している。車やバイクは厳しいのだろう。誰もが歩き。
殺さなくてもよさそうなゾンビを見つけ次第自ら近付いては殺してるグループを観察。棒の先にナイフか包丁を付けた武器で頭を突き刺している。
正解なのか分からない。自分が普通の人間ならどうするか?
何で感染するか分からないのだ。万が一返り血や傷口から血が入ったりしたら危険だと思うのだが。
何回か殺して大丈夫だったのだろう。
頭に刺さった棒をゾンビが掴む。棒は折れ。しばらく歩き、倒れた。
ゾンビはすぐには死なない。しかも力が強い。
頭を突き刺したり切っても安心は出来ない。
タナで頭を割っても生きてるゾンビもいる。
致命傷を与える箇所はどこなのか?
それも調べなければならない。




