現実.25
ふと我に帰る。時計を見るとかなりの時間が経っていた。
小説書く事に夢中になるとあっという間に時間が経つ。それも小説を書きたいメリットの一つでもある。
まだまだ書きたい事がある。丁寧に書きすぎかもしれない。でもどれも今だに鮮明な記憶なのだ。
あのブルドーザーの軍団はどこに行ったのだろうか。多分散り散りに逃げまくったのだと思う。スーパーのトイレに食料を隠した人間は生き残れたのか?あの家族は?自転車で逃げた男は?
今も東京はあのままなのだろうか?ゾンビの街になってるのか?
飛行機で空から東京の様子を見てみたい気持ちがある。でも今まで一度も飛んでる飛行機を見た事も、飛行機の音も聞いた事がない。ヘリコプター位は飛んでいてもよさそうなのだが。
世界が崩れてまだ三年しか。もう三年も。どちらだろう。
まだ三年しか経ってないのか。いや、もう三年も生き延びてこれたのか。
自信はついた。でも十年、二十年生き延びれるかの自信は無い。一週間だけなら志織と共に生き延びる自信はある。
三浦家と一緒なら一年、二年は生き延びれるだろう。
このままゾンビが減り、電気が復旧さえしたら、元の平和の世界に戻るだろう。以前より大きく後退した世界にはなるが。それでもいつかは元通りになる。
先の事は誰も分からない。復旧した途端またゾンビが発生するかもしれない。
道路には人一人、ゾンビ一体すら居ない。鳥と木と花。空気、太陽、空。そして自分一人だけの世界。
幽霊やお化けとか存在すると思っていたが今は全く信じられなくなっている。
ゾンビは信じる。実際にいるのだから。
UFOや神様。これは居ると今でも思ってる。
ツトムさん達が来るまでに荷物の選別をしなくてはならない。
紙とノートも必要だ。書き置きしとけば居ない間に来ても俺の居場所が分かるように。
俺はコンビニまで走った。
十分ちょいで着いた。五キロの距離を十分。速い方なのか分からない。もっと早く走れるが足が壊れるだろう。疲れは感じない。汗も息切れもない。ゾンビになってよかったと思う事の一つ。不便な事の方がはるかに多いが。
ゾンビは大人しくコンビニの店内に居た。まだ共喰いもしていない。俺が近寄ると店の奥の方に逃げた。
荷物は結局、全部持って行く事にした。
留守にする時は、体力回復の為に走って来ます。と書き置きしとけばいい。
帰りながら思い付く。
コンテナハウスに着いても誰も居なかった。
荷物を分ける。何回か往復した。と言わないと。普通の人間でこの重さは一往復では無理。
コンテナハウスの裏に押し車を置く。荷物のほとんどは志織が使う物だ。
俺に一番必要な手回し充電器を取り出す。それから望遠鏡を壁に掛ける。ナイフ。服。タオル。ロケット花火。紙とノート。
あとは必要ない。ピアノ線でワナを作るのもいいかな。
けっこうやる事がある。ただ歩いてるだけだった今までとは違うから、新鮮で少し楽しくなる。




