小説.24
その他も順当に集める。人間には出会わなかった。鏡も種類違いのを何枚かリュックへ。
バイク屋に寄ったがツナギは無かった。
左胸がかなり大きくなってるし、摂取しないとならない。
少し離れた所から大きな物音と悲鳴。個人経営のカメラ屋の店内から。
見つからないよう、すぐ逃げられるように覗く。三体のゾンビに乗っかられていた人間。足がもがいて動いていたが、やがて動かなくなった。
俺はナイフを取り出し喰べているゾンビの首元に次々と刺す。
足元には四体の遺体。いや、ゾンビ三体はまだ動いてる。
通りを見渡す。静か。ゾンビも見あたらない。
店内奥にある現像室のシンクに水が貯まっていた。
俺は人間の遺体を奥の部屋に引きずり、鍵をかけて、服を脱いだ。
遺体はまだ柔らかかった。何も考えないように、首を切る。血が大量に溢れ溢れる。首の骨をもぎ噛み付いた。
考えたらダメだ。目をつぶった。とても見ていられない。噛み、千切り、咀嚼し、飲み込む。噛み千切り、噛み砕き、呑み込む。口の中で骨の砕ける音が生々しい。鎖骨やアバラ骨を折る。食べられるだけ食べる。何も考えない。ただ行動する。
目をつぶったまま部屋から出る。食べ残した遺体も見たくなかった。赤い血は慣れたが、黄色い脂肪の色は気持ち悪くなる。内臓も気持ち悪い。脳みそは思うだけで気持ち悪くなる。魚の白子と同じだ。そう思っても脳味噌の血管の赤い色が邪魔をする。
いたたまれない気持ちになるのを誤魔化す為に左胸をかきむしる。多分、普通の肉もこそげ落ちてると思うが、かまわなかった。
生きる為に。そう思う。[生きる為に]俺は大声で叫んだ。
シンクの水を浴びる。落ち着いてくる。濡れたまま服を着る。どうせ左胸から血が滲むし、ポケットにも荷物が入ってる。リュックを背負いタオルで乱暴に髪の毛を拭きながら外に出る。
やるべき事を考える。
ゾンビに近付いてみるが襲われなくなったが、逃げはしない。死にたての人間を摂取してもダメみたいだ。ちょっとだけ期待したのだが。
残るは懐中電灯。本も持って帰ろう。どんな本を選ぶか意外と悩む。最初に決めといた方がいい。持って帰る本を考えながら電気屋と本屋に向かう。
アウトドア用品の店は見つからなかった。
オフロード用の自転車も欲しいと思う。
望遠鏡で探す事にしよう。
やるべき事はある。




