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現実.21

ふと、視線を感じ振り返る。痩せ細った若い男が物陰から俺を見ていた。俺は軽く頭を下げた。男は挨拶を返さず引っ込んだ。

雰囲気はニートっぽかった。人間関係が苦手で、興味はあっても自分からは動かない。動けない。自分に劣等感を強く持っているタイプ。


考えてると志織が来た。

[どう?]

俺が聞こうとした事を先に言われた。

[水も食料もあるし、人間関係もなかなか良好そうじゃないか]

俺は答えた。

[子供達が凄く平和なのよ。田舎の子供達って感じ。しばらくしたら色々東京のお話をしなきゃならないのよ]

志織は満足そうだ。俺は嬉しかった。

[色々、話を聞かせてあげればいい]

[うん。そのつもり。風呂も入っていいって。外にもあるみたい。皆で一緒に入るのよ]

皆…子供達。

[露天風呂か。オーロラを見ながらの風呂はいいかもな]

[荷物取って来ないと。どうする?]

志織は屈託無く言った。ここを気に入ったらしい。


俺はどうなる?

その思いは言葉にしなかった。出来なかった。

[後で取りに行くよ]

お姉ちゃーん。子供達が志織を呼ぶ。

[行って来なよ]

俺は志織に言った。志織は笑って子供達に向かって行った。


俺はどうしたらいい?


一緒に食事をするだろう。風呂に入れと言われるだろう。部屋と布団を借りるだろう。医者が見てあげると言われるだろう。

部屋の中で手袋は外さなければならない。

どう断る?


思い付きの考え。

ここは高台で竹やぶもあり、道からは全く見えない。逆にここから道の方が見えない。だから小さな見張り小屋を作り、そこで俺は見張りながら住む。食事は少な目にしてもらう。それなら誰にも見られないし、寝なくてもバレない。


なんだかんだ理由つけて一人で外出しなければならない。摂取と左腕の交換だ。


昨日摂取したから最悪でも六日は持つはずだ。匂いがキツくなるが、ヤケドのせいで皮膚が。と誤魔化せる。


いつも志織は大丈夫。と言うが、気遣いからかもしれない。

匂いがしないから大丈夫。と、これ位の匂いなら大丈夫。きっと後者だろう。


考える時間はある。

とりあえず今夜は手にファンデを塗り、食事は軽く。食べる事は出来るが味も分からないし、そのまま左腕に排出される。風呂は遠慮しとこう。


ある程度の想定をつけた。これ以上は深読みになる。浅はかな考えもダメだが、深読みも良くない結果が出る。経験済みだ。




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ゾンビサバイバル.番外編も書いてます。
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