現実.2
そこまで書いて、しばし指を止めた。
[いや、先分かりは良くないな]
俺は独り言を呟く。ストーリーに緊張感が無くなる。
左腕の手袋を外す。肘下から指までが膨らんでいる。髪の毛が肌に挟まっている。服の切れ端に小石も腕に埋まっている。人間にあたる排泄物が左腕から滲み出る。
よく分からないがおそらく生臭い。
匂いは自分だけなら大丈夫なんだが、志織がいる。
ほっとけば大きくなり腐敗し、やがてボタボタと崩れ取れる。もの凄い腐臭が漂う。腐った肉が腕にこびりつく。
だから俺は腕を丸ごと切り落とす事にしてる。
体内に入れた肉は、急速に分解、再構築され自分の血肉、骨となる。
あの医者が言っていた。
実験と称し鉄ばかりを摂取した時があったが、左腕が重くなるばかりで無意味だった。
手がハンマーやナイフみたいになれば。と少し期待していたのだが。
手を切り落としても、タンパク質やカルシウム…人肉を摂取すれば元に戻る。
今はもう人間の死体は見かけないのでゾンビから摂取する。気持ち悪いのだが片腕が使えなくなるのはとても不便だ。
豚肉を食べてみたが、皮膚が豚と同じような肌になったので、人肉以外は摂取しなくなった。
志織は寝たようだ。
俺は腕を切り落とす事とゾンビを摂取する為に静かに志織から離れた。
当然、志織が視界に入る場所しか移動出来ないが。