現実.15
コンビニの表側、道路の方から物音。俺は携帯から目を離す。
近くに居るゾンビの動向に目を配る。
まだ時間は3時過ぎ。
ゾンビは夜、人間を襲わない。ごく稀に居るのだが今ではほとんど見かけない。
だから人間は夜に行動する。食料などの調達は昼間はやらない。
俺にとって一番怖いのはゾンビ狩りをする人間だ。
夜の襲わないゾンビを殺しに来る。
生き延びてきた人間なら誰もが必然的にその思考にたどり着く。
ゾンビの数を減らしていけばいく程、生存率が上がるからだ。
聞き耳をたてる。ゴソゴソと物音。
この物音はゾンビが何かにぶつかって立てている音ではない。人間が物を漁る音だ。
近くの住民なら、このコンビニに無いもない事を知っている。旅人だろうか?
話し声は聞こえない。単独であればいいが。
荷台と荷物はうまく隠してる。よほどくまなく探さないと見つからない。
裏に来られてゾンビのいる車の中まで物色するだろうか。
車の上に不自然にいる俺を見つけたら。
降りるべきか。このまま裏に来ない事を祈るべきか。
チラリと懐中電灯の明かりが見えた。
確実に人間だ。
静かに車から降り、ゾンビを道路側に押す。ゾンビを見て裏側に来なければいい。だが、もしゾンビ狩りなら俺は隠れなければいけない。
三年生き延びてきた人間は知恵や機転に長けている。抜け目がない。体力も頑丈さも強い。
荷物の量を見て、志織の単独行動じゃない事も分かってしまうかもしれない。
単独行動する人間は人付き合いが苦手な人が多い。すなわち自己中心的か、攻撃性の強い性格。
消極的や自分を弱いと思ってる人間は徒党を組む。
大勢の人間も怖いが単独行動の人間も意外と怖い。
ゾンビを積極的に殺す人間が一番厄介。
攻撃性快楽からの殺し。もしくは恨みや復讐による殺し。
俺にとってはゾンビよりも人間の方を警戒している。
志織を起こすべきか。若い女の子は弱いからこその強みがある。もちろん強姦などの恐れもあるが。
志織は最初の頃と違い多少の音では起きない。ゾンビの唸り声を毎晩聞きながら寝なくてはならない。睡眠不足は体調に過敏に反応する。
だから寝る時は寝る。特に安全な場所では。
複数の灯り。懐中電灯の明かりが2つ。
一人ではなかった。




