小説.16
翌日、拳銃を探しに行く。
ゾンビは俺を襲わないが、逃げもしない。多分、俺の強さはここら辺りのゾンビと同じ強さなのだろう。なるべく近寄らないようにしている。
拳銃は落ちていないし、ヤクザの風貌をしたゾンビも居なかった。グチャグチャになったスーツや、ヤクザが好む派手なウェットやジャンバーが千切れて落ちている。落ちてる肉の塊の中にもそのジャンバーの破片が混ざっている。全員、喰べられたようだ。
噛まれたらゾンビになるが、ゾンビになる前に喰われるとゾンビにならないのか?ゾンビは喰われると死んでしまうのか?
色々考えながらデパートへ。
デパートで志織が使えそうな武器を探す。が、なかなかいい武器がこれといってない。
仕方ないので一番値段のいい運動靴を数足リュックに入れる。スポーツコーナーでスケボー用の膝当てと肘当て。ゴーグル。昨日のヘルメットは志織には大き過ぎた。子供用ヘルメット。スキー用の手袋。スキーウェアもリュックに。
農機具コーナーを見る。カマを数本。大きなナタを数本。腰に巻く作業用ベルト。クワにオノ。
志織が使えるいい武器が見つかった。電動釘打ち機。バッテリー式だから使い捨てになるけれど仕方ない。
自家発電機がある。燃料は重油で大丈夫なヤツだった。重油を入れて自家発電機を動かし、釘打ち機のバッテリーを充電する。その間に説明書を読む。
安全ストッパーがある。その部分を曲げる。チェーンソーに電動草刈り機。
デパートに住みたくなる。
いや、本気でここに住むのも悪くはない。本屋も服屋もある。狭い部屋に閉じこもるのは精神的に悪い。
ゾンビはウロウロしている。どうやって追い出すか。
釘打ち機の充電中に、木材コーナーで厚いベニヤ板を窓の所に置いていく。
入り口の全ての鍵をかけ、シャッターのある入り口は全てシャッターを降ろす。内側から棚を詰めてバリケードにする。鎖で抑える。ここには材料や機材がなんでも揃う。素晴らしい。
釘打ち機の充電が使える位に貯まる。
窓にベニヤ板を置き、片っ端から釘を打ち固定する。
ウロついてるゾンビを少し加工した棒で押して追い出す。
とりあえずこの広間は完璧。
逃げ場所も二階に上がれる窓がある。
デパート建物全体からゾンビを追い出したいがかなり時間がかかる。
ゾンビが俺の肩を掴み、嚙もう…喰べようとした。俺は振り払う。
色々と動いたから弱くなったのか?
掴まれた時に脱臼か折れたか、右腕は上がらない。ゾンビの力は強い。
腰のカマを持ちゾンビの首に目掛けて振った。切れ味抜群。ゾンビは倒れ込む。
他のゾンビは倒れ込んだゾンビにむさぼり付いたが、まだ数人は俺の方に来る。
少し悩んだが、倒れ込んだゾンビの右膝を切り落とし、逃げながら噛み呑み込む。まだ近寄って来る。二分位でゾンビは近寄らず倒した方のゾンビに向かいしゃがみ込んだ。
これでハッキリした。
やはり俺はゾンビか人間の死体を喰べ続けなくてはならない。
口の周りとバイクスーツは血まみれ。
血まみれついでだと、電動草刈り機を点ける。
しゃがみ喰べてるゾンビの首筋に草刈り機を切り込む。一瞬で頭が取れたが俺の身体が血まみれ。
チェーンソーも試してみる。
やはり返り血が凄い。草刈り機よりも酷い。全く使えない。
釘打ち機。当てるのが難しかった。頭に一本当てた位では倒れない。胴体は当然だが、太ももでも倒れない。足の甲だと倒れる。人間には効果的。これだけ持ち帰る。
ここに志織は来れない。
腐臭と菌が間違いなく繁殖する。
それよりも俺の身体だ。
ゾンビでも食べ物は必要。
いや、必要ないかもしれない。ゾンビが居ない世界なら。
噴水で身体を洗い着替える。この水を人間が飲むとゾンビになるのだろうか?
自家発電機を止めて、荷物を背負いホテルに帰る事にする。
二週間位はホテルから出ないようにしてみる。食べなくても大丈夫な身体かどうかを知る為に。




