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小説.2
車のドアを開けようにも俺の両手はない。
女の子はドアを開けようとしない。
窓ガラスを割る事を思い浮かぶも果たして正しい判断なのか分からない。
車から出た所でコイツらに襲われるなら車内の方が安全。
だが、いつまでもこのままではいられない。
それよりも自分の姿だ。もう一度サイドミラーを覗く。
俺の顔はまるで死人。もしくはゾンビのようだった。頬から鼻にかけて大きな咬み傷。痛みはない。そして俺は遺体を食っていた。
漫画や映画がそのまま現実になったよう。いや、現実になっていた。
信じられなかった。信じたくなかった。自分で気付かないうちに嗚咽していた
泣いていたのかもしれない。
女の子の悲鳴と顔の表面がモゾモゾと動いた感覚で我に返る。
今度はなんだ?
再びサイドミラーを覗き見る。
白さが薄まっていた。
血の塊はこびりついていたが、傷口は塞がってるように見える。
この時に気付いてたら…