十八年後
結局、全ての隠れ家を周り終えたのは十八年目。
人間と同じ、俺達も文明が無いと生きづらい事が分かっただけだ。
この十八年間でポピュレーターと何十人か出くわしたが、話を出来たのは、たったの二人だけだった。
一人は廃村の壊れた家の中に居た。何年も摂取をしてなかったらしく身体が弱っていた。が死ぬ事はしなかった。ずっとこのままで過ごすらしい。
思考能力がだいぶ低下していて、話しかけても反応がすごく鈍かった。
[肉食べるか?]の呼びかけにも[死にたいのか?]の案にもノーと答えるだけだった。
結局、何もせずその場を去った。
もう一人は地下水道に住んでいた。
歩いてる最中に、声をかけられた。声は真下のマンホールの隙間から聞こえ、ここ辺りで住むなと言われた。住むつもりはない。と答えると、使えない地下鉄の駅や線路はそのまま廃路にするらしいからそこで住めと、アドバイスをもらった。
接点を持てたのはその二人だけ。
志織は、インドが住みやすいと言う。
俺はアメリカの広さと自由さが気に入った。
どのみち、どこでも十年も居られないから転々とするしかない。
アメリカに戻る。戻るといってもアメリカは非常に広大。だが空に軍隊の飛行機、軍用機をよく見かけるようになった。
車や列車はまだ見かけないが、たまにバイクのエンジン音。
人が全く居ない都市と多い都市の差が激しかった。
ファームがある都市にしか人間は居ないようにすら思われる。
ファームの近くには必ず大型モニターが立てられてあり、そこで世界情報を知る事が出来る。
あとは、捨てられた数週間前や数ヶ月前の政府発行の新聞。
テレビ欄もあったが、どれも昔の映画ばかりだった。
ファーム内に風俗は無いらしくファームの外ではバザーと言われる店屋や風俗がデコボコに並んであった。
人気のない街では頻繁に轟音が鳴り響く。劣化した建物が崩れる音。
シアトルに居た時に、ニューヨークやアトランタの都会もそうだと。バザーの屋台で得体のしれない肉を食べている男の話を盗み聞きして知った。
シアトルとニューヨークでは、かなりの距離があるが、情報だけは速い。




