五年後
審判の日から五年後。あれだけ荒廃した世界は確実に回復していった。
以前と違うのは、磁場の影響で通信手段は電線や地下ケーブルによる有線通信となり、柵から覗き観れるファームは今まで見たこと無い位の電信柱が立ちケーブルが張り巡らしてあった。
人口は思ってたよりも多く、屋外テレビで見た公式発表ではファーム登録者は世界で十億人と公表された。
それぞれの国に違いはあるのものの、アメリカでは政府が統括しているファームと呼ばれるエリアがあり、そこには政府登録した人間が住み、非登録の人間はファームの外で生活していた。
ファーム外の場所は無法地帯となったが、ファームの拡大と増大のスピードを見る限りでは五十年後には、無法地帯は完全になくなると思っている。
政府登録は無条件で誰でも出来るのだが、登録をしない人間も多かった。
当然、俺も志織も登録はせずに自由に暮らしていた。というよりファーム住まいの方が不利益。
他のポピュレーター達は何人居るのだろうか。俺達のようにどこかでひっそりと暮らしているには違いない。
アメリカと旧ソ連が早くも主導権争いをし、少し遅れて中国が参戦し始めた。
日本はインドやイギリス、イタリアなどと同盟国を組み他の国へ同盟参加を呼びかけていた。
ポピュレーターが仲間を集めて人間と対抗するかと思いきや、そんな噂もなくひたすら隠れ潜んでいるみたいだ。
志織いわく、人間社会を支配するのは役目ではないとの事。
ヒロがやれば?と言われたが、人間の世界はどうでもいい。が素直な気持ち。
俺達はだいたい二カ月に一度、島から出る。摂取とガソリンや重油や本などの生活品の取得の為。
摂取は今のところは困らない。無法地帯なので、大きな街に行けばどこも荒くれ者が支配している。こちらから襲わなくても向こうから襲って来てくれる。
ファーム外では食料、薬品、燃料、銃火器は当然だが女の価値が格段に上がっている。
若くて綺麗であれば死体でも高額取り引きの一つになっている。
外でも商売が成り立つ社会は形成されつつある。
志織は当たり前というべきか、志織の好きな服で歩き回っている。
ほとんどが半ズボンにTシャツにリュックという軽装。わざと襲われる為。もあるが摂取際の血や脂肪が身体や服につくので、摂取後すぐ破棄出来るように簡素な服装になる。
ファームの拡大と共に無法地帯の生活品も増えていく。
俺の普段の生活は、最初の数年は読書が中心だった。小説も書くつもりだったが書かないでいる。面白い出来事は起こらないし起こしてもいない。引きこもりだったからだ。
読書以外は物作り。壊れたバイクや車の修復から始まり、物々交換用の刀や斧の鍛治。電線ケーブルを自作してみたり。地下室の拡大。今は風力発電を作っている。が、うまくいかない。
全ては退屈しのぎ。時間潰し。
志織はまだ写真にハマっている。




