現実.152
夜更けに陸を見つけ、朝日が出る前に岸に辿り着いた。再び激戦区へ。俺は早く決着をつけたかった。ジリジリと悲観したりするのがイヤだった。ライフルを探しながら進む。オノや刀などの近接武器は、死体を探せば見つかる。がライフルは見つからない。見つけても弾が無い。
志織は何本ものスポークとナイフを探し次々と身にまとった。
[憶測だけどね。二つだけチャンスはあるんだ]
志織が唐突に言った。俺は志織と向き合う。
[多分、ヒロはダビデに支配されないと思う]
ダビデは強い敵に自分のパーティクルで包み込み支配する。でも俺には通用しない。と志織は説明した。だが俺も赤色に発光してる。ダビデのパーティクルが付いてる。
俺は自分の手を見た。自分の発光は分からない。
志織の答え。
[その赤色は私のパーティクルに付いてる色だと思うの]
[俺の発光は志織のパーティクルなの?]
志織はうなづく。
[パペットは本体のパーティクルで動かしてるのよ]
なるほど。そういう仕組みなのか。と思った。
[ヒロは吸収出来ないし、ヒロが意識ある限りは私のパーティクルでさえ送る事が出来ないのよ。他の人からのパーティクルを送りつけられないはず]
志織が動けなくなっても俺だけ動ける。だが動けても不意をつける事は難しい。
[動けても俺では倒せないよ]
俺とダビデとでは世界チャンピオンと一般人の差はあるはず。
[逃げる事は出来るはずよ]
志織の言葉。
基本的に持久力や筋肉の差はほぼ変わらない。身体の大きさで多少変わるくらい。違うのは戦闘体験の差が違うだけ。
[志織を抱えて逃げる?なら今から逃げて志織が支配される前に頭だけにして…]
俺の言葉に志織は首を振って言った。
[逃げる事はしたくない]
俺だけ逃げるのは嫌だ。言葉に出さなかった。俺も戦う。その言葉に出せなかった。その代わり一つ妙案を思いついた。




