現実.147
四人立ち尽くす。三人の発光で周りだけ闇夜とは思えない明るさ。
[あぁ来たよ]
トニがウンザリした口調で伝えた。向こうから広がって見える明るい光。走って来てる。
[何人居るんだ?]
[四、五十人かな。いや、百人は居そうだな]
俺の言葉にトニが答える。俺はライフルを構えて予測して撃ちまくる。
無色かと思ったら黄色かった。
[ちょっと言いたい事があるんだが言っていいかな?]
トニは銃声の合間に言った。俺はうなづく。
[たった百人で俺達を倒せるとでも思ってるのか?]
トニはニヤケながら大声で言った。
[一度言ってみたかったんだ]
と言って刀に似た剣を抜いた。
俺は志織やトニを敵に挟むように移動しつつ、遠くから銃火器や弓矢とか飛んでくる可能性を探したり、敵の足を撃つ。
太ももやスネは意味がない。膝から下だ。身体のバランスが取れなくなる。
胴体を撃っても効果はあまりない。
頭や腕を狙うのはトニや志織に当たる可能性がある。
絶えず味方を挟む。襲ってこられたら俺は終わりだと思ってる。
今まで何度も戦う事を想像やシミレーションをしてみたが、倒せるイメージが現実味にならない。やられるイメージなら容易に想像出来る。しかもたくさん。
命の取り合い。敵もふざけてない。なのに次々と敵だけが倒れていく。志織達は一筋すら傷は付いていない。器用に攻撃をかわし的確に殺していく。
ライフルによる援護は必要ないように思える。
敵が残り一人に。その一人も逃げる事なくトニに向かってくる。トニは気負いもせず剣をかわし突き刺す。
最後の一人が倒れる。俺達は死体に囲まれる。
[また服を探さないとなぁ]
トニがいつもの口調でパルに言った。
[着替えなければいい]
パルは答える。トニは不服そうに、しゃがみ込み死体にかぶりつく。
パルも志織も血まみれ。俺だけがズボンと足元だけ血で汚れてる。
トニが千切った腕を俺めがけて振った。血しぶきが俺にかかり汚れる。
[皆で着替えようぜ]
トニの気楽さに俺は笑い、転がってる死体の首元にかじりついた。
志織も摂取し始めた。俺は志織を見ないようにした。
死体を喰べる事や喰べてるのを見たりする事には全く抵抗はない。だが志織が死体を喰べるのには抵抗がある。
むしろ不自然な気すらする。
人間の肉を喰べる。ガリッと骨を噛み砕き、肉や皮膚を噛みちぎる。口と顔を血まみれにして咀嚼する。
地面には綺麗に切断された頭から魚の臓物のような脳みそが溢れていたり、目玉が転がっていたり、膨らんでる腸がはみ出ていたり。
ここはもう人間の世界ではない。
元の世界に戻りたいか?ふと思った。




