現実.144
回収しないポピュレーターは異質。でも強制的ではない。
[回収しないポピュレーターっているの?]
俺は聞いた。
[滅多に居ないわね]
[回収しないでいられるの?こう…回収しなかったらどこかに異常をきたすとか]
回収しないとペナルティーを食らうのか?身体や精神に異常をきたすのか?
[回収してる間は、それが普通で当たり前の感覚になるわ]
回収する事は相手を殺す事。
俺の存在はAZにとって悪なのかも。ふとそんな事を思った。
[AZと話しをしたよ。AZは確実に存在する。俺には一切手を出さないと言ってた。暇潰し、退屈凌ぎらしい]
ある意味、AZの手の平で踊らされている。その事は言わなかった。志織もAZの一部だからだ。
[全てのポピュレーターに繋がっている。志織にも]
AZは俺と志織の関係を楽しんでるのか?
[AZが何を考えてるのか分からないわ。でも居るのは確かよ。それだけ。それで充分よ]
考えても仕方ない。と言いたいのだろう。俺は何でも理屈で納得したくなる。
[回収したくなったら言って]
俺はそれだけ言った。志織のしたいように。俺はそばに居られるだけでいい。理想は違うが現実的にそれが一番可能な願いだ。
二人どちらかともなく崖を登る。
俺は小屋の屋根に登り周りを見渡す。発光体は見当たらない。本当にやって来るのか?
俺と志織。まだ赤く発光している。ダビデはまだ健在。殺されるとは思えない。
[ダビデは仲間のパーティクルも回収するとトニが言ってた]
[多分ね。私を襲うかもしれない]
志織の目が下を向く。志織は、絶対回収しに来る。と思ってる。
[志織はダビデの回収出来る?]
俺は聞いてみた。殺せるか?と聞きたかったが、言えなかった。
[どちらかなら。多分]
本体とパペットの二体相手は無理という事。
[ライフルで殺せるかな?]
志織を殺しに来るなら俺はダビデを殺せる。ダビデでなくても。
[強敵相手ならきっとパーティクルで包むと思うわ]
相手のパーティクルに包み込まれると肉体と思考が停止する。その代わり使う側は桁違いのパーティクルを使う。エイやカニはそうしてカーリーの地位を不動にしている。
[志織はダビデを包み込めるの?]
[無理ね。ダビデの半分も無いもの]
[包み込まれてしまう?]
[多分ね]
俺はため息を吐いた。やはり志織はパーティクルを回収しなければならない。回収されない為に。
AZはこのシステムをどれだけ考えて創ったのだろうか。
殺し合わなくても回収出来るはずなのに、わざわざ回収し合わせるように仕組んでる。
退屈だから。その理由だけで。
人間が地球をもっと大事にしてたら、ポピュレーター同士の戦いは起きない。
また袋小路に辿り着く。考えても仕方ない事。
それよりも、これからどうすべきか?
[トニやパルを探しに行こうか]
俺は意見を出した。




