現実.129
[助かったよ]
トニとパルが俺に礼を言った。俺も、助かった。と答える。俺一人なら殺されていた。
[頭を狙えなかったら手か足を狙った方がいいよね?]
俺は確認の為に言った。
[刃物使いなら手や腕を。大きなヤツなら足の方がいい]
パルが言った。俺はうなづく。
[銃を持っていたら?]
[なるべく手を。銃でもいい。撃てなくさえすればなんとかなる。もちろん頭部を狙えればそれにこした事はないな]
パルの言葉に俺はうなづく。
俺もそうだが、銃を持ってる人は格闘に自信がない。殺されないように離れて倒したいからだ。パーティクルを回収出来ないから損な役回りかもしれない。
[しかし、この人数で俺達を襲うかね?]
トニは強がりとは思えないセリフを言った。十人で二人や三人のパーティクルを回収する。簡単に倒せると思ったのか、手慣らしの為に襲ったのか。
答えは分からない。だが俺の本格的な初戦闘。
慌てる事なく上手く立ち回れたと思ってる。それでもたまたま上手くいっただけだとも思う。万が一、当たっていたら。万が一、トニやパルが殺されたら。万が一…。
色々な未来が浮かぶ。
[とにかく生き延びた]
トニがフォローするように言った。
[今無事に生きている。それが肝心]
パルも気遣ってくれる。
そう。もしも話を考えても無駄だ。
[銃を探そう。いちいちポルプアクションしてたら効率が悪い]
トニが言う。
俺達は遺体を漁りながら向かう。
まだ銃声は聞こえない。




