現実.124
トニに狙撃を見せたいが、そんな時に限ってなかなか敵は
現れない。
俺は空き缶からどんどん離れて狙撃する練習をしている。
ダビデが俺に高性能のライフルを渡しに待たせたヤツが来てない。
トニと二人で跡地に向かう。トニはパルも一緒に。と誘ったがダビデのパペットだけを残しとくわけにはいかない。とパルは行かず。
都市に入る前からトニの雰囲気がかわる。落ち着きながらも始終周りを見渡す。緊張感が伝わる。
パルはそんな事はなかった。俺が気付かなかっただけかもしれない。俺も用心深く警戒する。
大きなマンションの中に二人いる。とトニは言った。動きが止まった。と言い、俺達に気付いてる。と敵の居場所を教えてくれる。
俺は直接でないと発光は分からない。
[降りて来るぞ]
のトニの声で俺はスコープで入り口を見る。
[二階だ。左から三つめ目。小さな窓]
三つ目の窓。多分、階段の窓だろう。その窓に焦点を当てる。
ゆっくり覗くはずだ。顔半分だけ出す。そう予想し、標準を窓の右隅に定める。最初から顔を出さないかもしれない。
色々想定する。
[階段降りてきてる]
トニの言葉に俺は標準に集中する。
この距離なら当たる。
ヘルメットが見え、額、目、鼻が見えた。俺は撃つ。顔のど真ん中、鼻に当たる。
[スゲーな]
トニは言った。もう一人いる。スコープから目を離さない。
[しゃがんでるぞ]
トニが説明してくれる。
[あ、回収しやがった。這いつくばりながら階段を降りてる。逃げてるな。どうする?追うか?]
俺はスコープから顔を離した。
[当たって良かった]
俺は言った。回収したという事は松果体に当たったって事。生き残った方は窓を覗いていない。敵が何人か分からないから逃げるだろう。
[もっと近くから撃てない?]
遠くからではなく近くから?
[もちろん撃てるよ]
俺は答えた。遠くからなら分かるが何故?
[せっかく倒しても回収出来ないじゃん。次から俺が近づいて囮になるから、それからにしてくれよな]
なるほど。
[分かった]
俺は答えて弾を詰めた。
身を守る為に殺すのではなく、パーティクルを奪う為に殺す。
ポピュレーターと俺の大きな違いだ。




