現実.112
久しぶりに一人きりになる。
大きく深呼吸をする。
俺の武器が出来た事が本当に嬉しい。
ポピュレーターより視力が高い。目がいい。この利点を狙撃以外にも何か使えるかを考える。
双眼鏡で辺りを見渡すが、すぐに外した。ポピュレーターを見つけるなら裸眼の方がいい。発光してるからだ。
視野を広めて神経を張る。視界に動くのがあれば気付くように。
静かな時間が過ぎる。
はたして俺と三人のパペットをわざわざ狙いに来るだろうか。でも先程四人が来ていた。隠れる為に来たのか。俺達を狙って来たのか。たまたま見つけたのか。
志織達は速く走っても時速三十キロも出ないだろう。二十キロで一時間ちょっと。ここから約二十キロ先でもう志織達は戦っている。
すぐ近くではないが遠くもない距離。
サブマシンガンやグレネードランチャー。手榴弾。戦車。火炎放射機。
志織達はどうやって生き延びるのか?
日本を思い出す。日本は平和だ。よほどの事がない限り強力な武器は手に入らない。
つい一週間前は日本でノンビリと旅をしていた。
一気に違うジャンルの映画へ入った気分になる。
夢の中の夢とさえ思う。
近くで小鳥のさえずり。遠くからかすかに波の音。
平和な日本の海岸にいる錯覚を覚える。
転がってるポピュレーター。つまり人間の死体。慣れてしまった。
禍々しい銃や手榴弾。殺し合い。おそらくそれも当たり前になるのだろう。
独りの時間。色々な思考が浮かび交差する。現実が次々に変わるスピードについていくだけで精一杯。
このまま何事もなく一年が過ぎ去ればいい。一年。短いようで長い。左腕に汚れが溜まってきている。志織はどの部位に汚れが溜まるのだろうか。
志織はポピュレーターを摂取できるのか?
様々な想いや考えが次々と浮かぶ。
一番最初に考えるべき事。
この場所をより安全にする。
見渡す限り、膝下位の草が生えている。高い木はない。地面は水を吸って柔らかい。湿地帯。穴は掘りやすいが崩れる。
ワイヤーの罠を張るのは難しい。
落とし穴も無意味だし、むしろ狙いにくくなる。
手榴弾の罠を作るべきか。
小屋の後ろに行く。思い切り飛べば海に飛び込める。
とりあえず空の鉄箱を持ち出し、膝位の高さに並べる。弾除けのバリケード。うつ伏せになり隙間からライフルを構えてみる。悪くはない。




