現実.111
[高性能スコープがあるかもしれない]
トニはそう言い小屋に入り箱を片っ端から探す。パルが俺に小屋に行け。と首を動かす。パルが見張る。
[いいのがない]
トニは言いながら机の上にスコープを何個か置く。探し出したスコープはどれも同じ型のスコープだった。ポピュレーター達にはスコープはアテにならない武器。狙撃は向いていない。
俺の唯一の利点が出来た。遠くからの狙撃。スナイパー。
トニが色々な銃を品定めして一丁の銃を俺に手渡し言った。[頼むぞ]
俺はうなづく。俺は役に立てる。背中がゾクッとなる。
ポピュレーターは狙撃される可能性は低いと思ってくれていたら助かる。
自分が出来ない事は、同じポピュレーターも出来ないと思うはずだ。
ふと思った事を試す。俺は弾の入った鉄缶を持ち、トニから少し離れて聞く。
[この文字読めます?]
[ダンガーだろ]
[ならこれは?]
次に小さな文字を指す。
[フルメタルジャケット]
[これは?]
一番小さな文字を指す。
[…分からん]
[全く?]
[ボヤけてるな]
俺は鉄缶を置いてパルの横に並び鉄缶を見る。小さな文字もしっかりと読める。ボヤけてもない。
ポピュレーターは俺より目が悪い。俺の視力は普通なはず。
パペットだからかもしれない。ポピュレーター本体の方がもっと目が悪いかもしれない。
視力が低下してる代わりに発光で見れる。人間は発光が見えない代わりに視力が発達したのかもしれない。
どちらでもいいが、ポピュレーター達より俺は視力が高い。
使える唯一の武器。正直、かなり嬉しい。
[志織達が激戦区に入った。俺達は動けなくなる]
外のパルがドア越しから声をかけた。
[俺は視力がポピュレーター達よりかなりいい。スコープを覗くと発光が消えるから狙撃できる]
俺はパルに言った。本体のパルに伝わるはず。志織にも伝わるだろう。
[誰かがスコープのいいヤツを持ってくるそうだ]
パルが言った。
[下に横穴があっただろう。その通りに隠れた穴があるんだ。その奥に俺達がいる]
ダビデのパペットを背負いながらトニが言った。俺はうなづく。
[絶対に無理するなよ。危なかったらその穴へ来るんだ。お前を死なせたら俺達が志織に殺されるんだからな]
冗談混じりにトニが付け足しハシゴを降りる。
[頼むぞ]
パルが俺の肩を叩き、トニの後に続く。




