現実.110
急いで外に出る。
発光体が四つ見える。こちらに気付いてるのか隠れずに真っ直ぐ向かって来ている。隠れようにも隠れる木がない。
ライフルを渡される。ダビデのパペットは動かない。
トニとパルと並んでうつ伏せになり、ライフルを構え標準を覗く。
早くもトニとパルが撃つ。けっこうな銃音。
俺も狙いを定めて引き金を引く。引き金は動くが弾は出ない。銃を見てるとトニがボルトアクションを引け。と教えてくれる。
俺は再び標準を定め狙い撃つ。
一発目で当たる。向かってくる一人が倒れる。
地面に腹ばいになって隠れた別のポピュレーターの頭を狙い引き金を引く。
そいつの身体にまとっていたパーティクルが霧散してくのが見える。松果体に当たった証拠だ。
[なんで当たるんだよ]
トニが驚いて言った。俺自身も驚いてる。[分からない]俺は答えながら撃つ。
残り二人がジグザグに走り出す。標準を定めて撃つが当たらない。何発撃っても当たらない。トニもパルも撃ってるのだが当たらない。
二人は撃ち返さない。銃を持っていない。もしくはギリギリまで隠し持っているのか。
トニが銃を置き走り出す。格闘戦。相手もトニもナイフを手に持っていた。パルも走り出す。
俺は他の周りを見渡す。発光体は他に見当たらない。
俺も参加するか迷ったが、四人の闘いを見て明らかに足手まといと分かる。
四人とも身体の動きはもちろんだが、ナイフ捌きも速い。トニが相手を吹き飛ばし、倒れ込んだところに乗りかかりナイフを頭に突き刺す。すぐさまパルの援護に向かう。二対一。決着はすぐに着いた。
トニとパルが倒したポピュレーターに近づく。霧散してるパーティクルがトニ達に吸い込まれていく。
あれがパーティクルの吸収かと思いながら眺める。
[なんで当たるんだ?銃得意なのか?いや違うよなぁ]
トニが再び質問する。ボルトアクションを引く事すら分からなかった。ただ標準を定めて引き金を引いただけだ。
[マグレだよ]
俺は答えた。そう。マグレとしか言いようがない。
[銃はお前に任せるわ。眩しくてかなわわん]
トニの言葉で、ひょっとして…と思い付く。
[ひょっとしてスコープを覗いても発光が分かるの?]
トニは[当たり前だろ]と答えた。
俺は望遠鏡とかメガネとか何かを通して見ると発光が消えて見える。
[俺は発光が消えて見える]
呟くように答えた。




