現実.106
[考えるのもいいがバトル中は絶対に考えるなよ]
隣に座ってるパルの忠告で我に返る。
この没頭する癖は治さないとヤバい。
窓から外を眺める。空はオーロラでいつもと変わらない景色。下は黒い海一面。遠くも暗闇。アメリカまでどれ位で着くのだろうか。
トニにポピュレーターの倒し方を聞く。
最終的に松果体を傷付けないとパーティクルは放出されず吸収出来ない。
身体を欠損させ近寄り、松果体を破壊しパーティクルを放出。そのパーティクルは近くのポピュレーターが吸収できる。吸収できず霧散したパーティクルは空に回収する役目のアイポが吸収してく。
今までにこれ程の争いはなかった。人間の数がここ百年で飛躍的に増え新しいポピュレーターも増えたからだとトニが付け加えた。
まだ審判の日が始まっていないのに奪い合いが始まっている。AZはこれを望んでいたのか?
考え事に引き込まれそうになるのを抑える。
ダビデが大きい黒いゴスロリ調の服を着たフランス人形を抱えて来た。降ろすと動いた。ダビデのパペット。三、四歳の幼女。人形のように白い肌と目が大きい。
攻撃目的なら不向き。だが防御なら?…隠す為か?いや不意をつく為にか?審判の後の事を考えて幼女にしたのか?
[私の子供だ。この子を共に]
ダビデの口調でその子が口を開く。それからその子は俺とパルの間の座席に登り座った。
子供は作れないはず。何らかの理由で我が子同然なのかもしれない。
俺はきっと戦闘は避ける。逃げ回ると思う。だからダビデはパペットのこの子を俺に渡したのか。
もしくは逃げないよう見張る為に渡したのか。
幼女を見る。座ったまま目配りすら動かない。ダビデは神経を全て本体に集中しているのだろう。
ダビデのパペットは完全に予備扱いと分かる。
本体もパペットも壊れるとAZの元に還る。
だが実際に生まれ変わったポピュレーターはいるのだろうか?
人間みたいに死んだ先の事は本当は分からないのかもしれない。




